2021(令和3)年度自主研究レポート
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1.土砂移動シミュレーションに関する研究 |
(1) 河床変動計算手法に関する研究 本研究は、土砂・洪水氾濫対策の検討で使用される一次元河床変動計算を、簡易に計算する手法について研究するものである。 本年度は、汎用性と操作性を考慮して Excel と VBA による簡易な計算手法を作成し、災害の再現計算を行い、課題を整理した。このほか、降雨分布による流出解析システムの検討、また鋼製スリット堰堤の開口部の閉塞を表現する計算モデルを実装した。 |
(2) シミュレーション技術を用いた新務開発 本研究はシミュレーション技術の改良および新たな計算技術の開発を目的とする。 本年度は、流木の閉塞による氾濫範囲算定のためのシミュレーションを検討した。まず、流木の閉塞の条件について既往文献を調査し、条件を整理した上で、プログラム検討を行った。また、昨年に引き続き現状のシミュレーションプログラムに実装している機能や構成則について調査し、確認を行い、今後のプログラム開発の方向性を検討した。 |
2.崩壊危険地の推定と発生土砂量の算定等に関する研究 |
(3) 新たな生産土砂量の算定の検討調査 本研究は、砂防計画において用いる降雨規模と計画生産土砂量(崩壊土砂量)の関係の算定式を提示することを目的とする。 本年度は姫川流域における崩壊地判読データ及び降雨データ(平成 7 年 7 月災害など)を用いて、崩壊発生と降雨量との関係分析を行った。検討の結果、崩壊箇所に関する土壌雨量指数および1時間雨量の最大値には一定の関係性が認められ、この関係に崩壊面積率を対比させて、崩壊面積率をアウトプットとする予測式を提案した。 |
(4) 深層学習を用いた崩壊危険地の推定に関する研究 本研究は、崩壊地の地形の画像データを深層学習により、実効性のある崩壊危険地の抽出・推定技術の開発を目的とする。解析は、AlexNet 及び GoogLeNet を用い、京都府及び九州北部の崩壊地を対象に行った。その結果、DEM を用いた場合は高い正答率は得られなかったが、CS 立体図を用いた場合は比較的精度の高い結果が得られた。今後は、様々なケースを用いた検証を行い、判別精度を向上させていく予定である。なお、本研究は、京都府立大学との共同研究として実施したものである。 |
(5) 土石流外力の観測手法に関する研究 土石流外力を実際に観測した事例は多くなく、構造物に破壊が生じた場合、破壊痕跡などから作用した荷重等を推定することが多い。そこで、活発な土砂移動が継続している渓流(天竜川水系与田切川等)において、土石流外力を直接、間接的に観測する手法について調査した。 |
3.新たな砂防工法に関する研究 |
(6)コンクリートブロックを活用した砂防堰堤に関する研究 本研究は、コンクリートブロックの砂防堰堤への活用を目的に、設計等の課題を抽出し、改善手法の提案を行う。 今年度は初年度ということもあり、事例収集と課題分析のための整理を行った。今後は、コンクリートブロック堰堤活用の条件や活用方法を検討し、成果をとりまとめる予定である。 |
(7)ワイヤーネットを用いた多様な土砂災害応急対策工の開発に関する研究 本研究は、土砂災害発生直後の応急対策工法の一つとして用いられているワイヤーネットについて、工期の短縮や重機等を極力使用しないで施工する応急対策工法の開発を新たに行うものである。本年度は、民間企業との共同研究により、ネットロール土のう工法を単体の土のう積みと比較検討するために土砂衝突実験を実施した。また、熱海市逢初川の土石流災害の復旧工事において、本工法が工事中の安全対策(仮設堰堤)として採用され、着工から完成まで 10日程度、発災後 2 週間~1 か月程度で完了し、想定通りの施工性であることが実地確認できた。 |
(8)土砂・洪水氾濫対策の工法に関する研究 本研究の目的は、土砂・洪水氾濫対策として、流路工区間に遊砂地を設置する際に、効率的に土砂を堆積させるための工法を開発することである。本年度は、昨年度の条件から勾配、流量および流砂量を変えて水理模型実験を行い、遊砂地工内に設置した横工の効果について、より一般化するための予備実験を行い、堰上げや減勢への影響を検証した。 また、既設不透過型砂防堰堤の上流に設置する流木捕捉工について、効果的な配置方法に関する水理模型実験を行い、流木捕捉効果と堰上げ抑制効果を両立する配置方法を確認した。 |
(9)透過型砂防堰堤の土砂捕捉機能に関する研究 本研究は、鋼製透過型砂防堰堤に活用される礫径調査で、一般的な調査手法であるランダム法(土石流の礫堆積群を目安に、その中から礫をランダムに選定し、調査する手法)の妥当性の検証を目的に、UAV を利用した河床の礫径分布調査と比較した。本年度は北海道、鹿児島県、高知県で実施し、礫径加積曲線の比較から、ランダム法による最大礫径の設定が妥当であることを確認した。 |
4.土砂洪水氾濫対策計画における鋼製透過型堰堤のあり方に関する研究 |
(10)土砂洪水氾濫対策計画における鋼製透過型堰堤のあり方に関する研究 本研究は、土砂・洪水氾濫対策計画における鋼製透過型砂防堰堤のあり方を研究するものである。 本年度は、現行の砂防基本計画策定指針(土石流・流木対策編)において土砂・洪水氾濫対策の適用が明記されていない部分があることから、土砂・洪水氾濫対策としての案を検討した。また、鋼製透過型砂防堰堤の施設効果は現状では土砂捕捉機能が前提となるが、土砂・洪水氾濫対策としてピークカットなどの土砂調節機能を期待できる可能性があることから、施設に求める機能を明らかにし、部材間隔の設定方法について検討した。 |
5.特殊・大規模な地すべりの分布状況に関する研究 |
(11)特殊・大規模な地すべりの分布状況に関する研究 気候変動に伴う豪雨や台風等の頻発により、これまで想定されなかった場所や規模の地すべりが発生する可能性が高まっており、その対応が課題となっている。これまでに関東、中部および四国地整管内の発注業務において、GIS 等を活用して特殊・大規模な地すべりの分布状況を分析した。 本年度は、現在直轄地すべり対策事業を実施していない地域の特殊・大規模地すべりについて、その分布や規模等について GIS や危険箇所カルテ等を活用して分析した。次年度以降は本年度の成果を踏まえ、「特殊・大規模地すべりの分布状況」についてとりまとめる予定である。 |
6. 火山噴火時の効果的な緊急対策の実施に関する研究 |
(12)火山噴火時の緊急対策工の開発に関する研究 本研究は、火山噴火等に起因する土砂災害に対し、短時間の施工かつ安価な緊急対策工(捕捉工、導流工)の開発を目的とする。 本年度は、火山防災担当者に対しヒアリング調査を実施し、火山噴火時の各局面における要望等を整理した。また、過年度に整理した対応事例等を踏まえ、基本対策、緊急対策、応急対策に分けて考え方を整理し、各々の位置づけや外力の考え方を整理した。さらに、降灰後の土石流の外力に着目し、限られた施工期間で効率的に対策効果を発揮できるよう、1)段階的に対象規模に対し施設効果を得る、2)堤体の断面積を小さくし、施工時間を短くする視点で検討を進めている。 |
(13)火山防災情報を活用した火山砂防担当者のフォローアップに関する研究 本研究は、火山噴火は発生頻度が少なく、噴火時に対応した具体の情報等が一元的に管理されていないことを踏まえ、火山防災に係る情報のデータベース(DB)を構築し、センターの職員がこれらを活用し火山防災の能力向上が図られることを目的とする。また、全国の火山砂防担当者への技術的なアドバイスだけでなく、火山噴火時などに的確に支援する際の基礎情報にも資するよう作成する。 研究は次の手順で行う。①アウトプットとなる DB の構成案の検討、②火山防災担当者が求める事項の把握、③火山噴火に関する現象から防災対応に至る各事項の収集、整理、④若手技術者への知識や経験のフィードバック、⑤最終的な DB の構築、である。本年度は上記①について研究を進めた。 |
(14)Real Time Hazard Map システムに関する研究 本研究は、火山噴火時に迅速に災害予想区域を作成するため条件入力-計算-結果出力を一体化した Real Time Hazard Map システムの開発を目的とする。本年度は国土地理院の基盤地図情報数値標高モデルに加えて、レーザ航測等により作成された地形データを登録し、画面表示や計算開始点を設定する機能を追加した。また、富士山のハザードマップ改定で使用した溶岩流、火砕流、融雪型火山泥流の計算データを本システムに登録し、動作確認を行った。 |
7.透過型砂防堰堤の渓流環境に対する効果に関する研究 |
(15)透過型砂防堰堤の渓流環境に対する効果に関する研究 本研究は、透過型砂防堰堤の渓流の連続性を保つ機能の確認を目的とし、不透過型堰堤、鋼製透過型堰堤、コンクリートスリット型堰堤の周辺において、生物調査や物理環境調査を実施し、具体の効果を確認するものである。生物調査は魚類を対象に直接採捕調査と環境 DNA 調査を、物理環境調査は水深、流速等を調査する。 本年度は、昨年度までの調査で未確認だった調査時期の影響について、魚類の遡上に合わせた時期に変更して調査を実施した。調査結果は昨年度までと同様の傾向であり、透過型堰堤は魚類の往来経路としての機能が確認される一方、現在の構造では遡上阻害要因にもなり得ることが確認された。 |
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