鋼製構造物研究室
鋼製構造物研究室は、令和6年4月の組織改編により設置された部署で、土砂災害や流木災害を防止・軽減するための構造物に関する調査・研究を行っています。
最近の研究内容
流木捕捉工に作用する流木の衝撃力に関する研究
流木捕捉工における流木群捕捉時の荷重特性に関する一考察
(山⼝・中谷・井上・石丸・石垣・香月・堀⼝ 2024砂防学会)
近年の気候変動の影響による土砂災害の激甚化、樹木の成長による流木径の巨大化により、流木の脅威は増大しており、対策構造物として透過型砂防堰堤、流木捕捉工が用いられています。対策構造物の設計において、流木の衝突に対する安全性照査は、流木単体の衝撃力が用いられています。しかし、実現象では流木は集合塊である流木群として衝突し、短時間で連続的に衝突すると考えられ、流木単体の衝撃力よりも大きいと想定されます。そこで、流木捕捉工に対する掃流時および段波時の流木群の衝突実験を行い、構造物に作用する荷重について検討しました。

流木捕捉工における流木群捕捉時の捕捉高さに関する一考察
(石垣・中谷・井上・山⼝・石丸・香月・堀⼝ 2024 砂防学会)
現行の流木捕捉工の設計指針では、流木の捕捉高さは最大流木径の2倍程度を加えたものとなっています。しかし、流速の大きい土石流区間での捕捉高さについては知見が不足しています。そこで、土石流堆積区間の急勾配な流下状態を模した水路実験を用いて、捕捉工を模した柱に流木群を塊状に流下させて衝突・捕捉した時の捕捉高さについて検討しました。実験の結果から次の知見を得ました。
①流量を大きくするに伴い、流木の最大捕捉高さも高くなる。
②ただし、衝突直後の複雑な挙動により、流木径が大きくなるほどばらつきが大きくなる。
③最大捕捉高さは流木長に対して0.5~1.3倍程度であり、せり上がり高さは流木径のおよそ7~11倍となる。

個別要素法による流木単体の衝撃力に関する基礎検討
(香月・井上・和田・吉田・堀口 2023 砂防学会)
近年、土石流災害において、流木災害が大きくなってきました。立木の成長により、流木が既往の研究の対象よりも大きくなると、衝突荷重も増大するので、その差異を把握していくことが望まれます。そこで本研究では、個別要素法を用いて、実流木の固定面への衝突荷重推定を試みました。直径50cm、長さ10mの流木の解析モデルにて計算を行った結果、衝突力3m/sではおおむね2×10^5N(20トン)ですが、10m/sでは7×10^5N(70トン)となり、自重(1.7トン)の10~40倍近くとなりました。個別要素法による推定衝突力は、実構造物に対して大きな破壊力を有することを示唆しましたが、既往研究(外挿推定)に比して1.5倍程度となっており、信頼性を高めるため更なる研究継続が必要です。

コンクリートブロック堰堤の安定性に関する研究
コンクリートブロック堰堤モデルの底面応力に関する個別要素法による検討
(井上・志水・三上・栗原・香月 2024 砂防学会)
土砂災害の対策工事において、上流の不安定土砂による2次災害対策としてコンクリートブロックを用いた仮設堰堤を建設するケースが見られます。その設計は全てのブロックが連結し、一体化していると仮定した上で、不透過型コンクリート堰堤の設計手法を準用しています。しかし、この仮定の妥当性について十分に検討した資料は見当たりません。そこで、安定性照査の第一段階である沈下安定性に用いられる底面応力について、個別要素法を用いて、現行設計モデルとブロック積み堰堤モデルとの比較検討を行いました。

応急的に設置するコンクリートブロック積砂防堰堤の安定性に関する一考察
(佐々木(司)・伊藤・鷲見 2024 砂防学会)
ブロック積堰堤はブロック相互の嵌み合わせによって一体性を維持しますが、このような特性を考慮した検討手法は確立されておらず、マスコンクリートと同様の基準が準用されています。また、応急対策の場合は迅速に設置することに重点が置かれるため、通常必要となる基礎処理や袖部処理を行わないことが多いです。これらに起因する被災事例が確認されており、ブロック積堰堤の施工性を損なわずに安定性をいかに確保するかが重要な課題となっています。これらの課題に対し、土砂災害発生後に応急的に設置するブロック積堰堤の安定性を確保するための対策方法を検討しています。

