技術戦略研究部は、昨年7月に発足した新しい研究組織です。一歩先、百歩先を見据えた砂防事業の在り方を考える部署です。砂防事業を世の中の様々な活動に戦略的かつ有機的に結び付けていくことが大きな役割であり、技術開発だけでなく、制度や社会の慣習、新たなコミュニティの創造といった多様な要素との連携を重視しています。
研究の方向性のキーワードは、森林・生態系の保全、国立公園や国定公園など景勝地の保全、地域の伝統・歴史・文化の継承、内需・外需を支える観光地の保全、人の交流と物流を支える道路網・交通網の保全。これらの保全が永続的なものとなるための山地流域の保全活動の在り方。このようなキーワードを取り巻く社会状況、利害関係者、住民生活、経済活動などを注視しながら砂防が果たす役割を研究しています。
現在、(一財)砂防フロンティア整備推進機構と協力し、国土交通省砂防部との連携会議を通じて、他分野との関係構築に向けた交流を始めています。
(リンク先)
・ 「技術戦略研究部」の取り組み(機関誌sabo vol.135)
・ 砂防の技術・管理に関する研究会
最近の研究内容
□ 災害発生時の流木処理費用に関する事例調査報告
(後藤・飯田・関戸・宮瀬・伊藤・森田・冨田 2024 砂防学会)
本研究は、砂防事業評価において災害時の流木の撤去・運搬・処理費用を算出するための参考値について、近年の土石流発生事例を基に分析し提案したものです(表1)。国土交通省砂防部との連携会議のもとで流木の撤去・運搬・処理に関する具体的な事例を6つ収集し、単位重量当たりの費用を比較しました。その結果、撤去費用に係る単価の参考値について示すことができました(25,001円/t)。一方、運搬費用については、処理場までの距離や車両の積載能力で異なること、また、処理費用については、処理方法の違いが大きく影響し、特に土砂が混入した流木の処理コストが高いことから、参考値の設定を行うことはできませんでした。