STCの取り組み

災害緊急調査

令和元年10月台風19号豪雨により阿武隈川水系内川流域で発生した土砂移動現象について

※こちらは、機関誌『sabo』Vol.128の内容を載せております。

◆令和元年10月台風19号豪雨により阿武隈川水系内川流域で発生した土砂移動現象について

1.はじめに
 阿武隈川水系内川流域において、令和元年台風19号の接近に伴い、10月12日の夜遅くから未明にかけて雨が降り続き、台風19号接近時の降り始めからの総降水量は丸森町の筆ひっぽ甫にて594.5mm(既往最大値418mmを上回る)、丸森で427.0mmを観測した。台風19号の詳細な降雨状況については井良沢ら(2020)を参照されたい。流域内の観測所では、河川水位が計画高水位超過し、18箇所で堤防が決壊、内川下流域において大規模な洪水氾濫被害が発生した(写真-1)。
 流域内でも崩壊、土石流、渓岸侵食、土砂・洪水氾濫により人家や道路の損壊・流出等の甚大な被害が発生した。この豪雨により、宮城県では10月12日19時50分に大雨特別警報が発令された。県内の土砂災害発生件数は254件であり、18河川36箇所の堤防決壊が発生、死者19名、行方不明者2名、床上浸水1,614棟、床下浸水12,151棟にも及び、甚大な災害となった(令和2年4月10日現在)。
 当センターでは、令和元年11月2日〜3日に内川流域における土砂流出による被害の実態・土砂移動状況把握のために現地調査を実施した。ここでは現地調査および空中写真・現地写真等より確認された被害状況および土砂動態について報告する。

(写真-1)台風19号出水による内川流域の洪水氾濫(国土地理院撮影)

2.内川流域の概要
 一級河川阿武隈川水系内川は宮城県丸森町と福島県相馬市の県境を源流とする、河川延長約18.2km、流域面積約105km2の流域である。主な支川は五福谷川(流域面積23.8km2)、新川(流域面積約16.9km2)であり、2支川が合流したのち阿武隈川に注ぐ。山地部には花崗岩が分布し、台風19号豪雨により五福谷川を中心として山腹崩壊・支渓流からの土砂流出が発生した(図-1)。
 各支川の下流域は築堤区間となっており、複数箇所の堤防決壊により広範囲における氾濫被害が発生した。

(図-1)阿武隈川水系内川流域図(国土地理院垂直写真・分布図に加筆)

3.流域内の土砂移動状況
 内川本川および被害が甚大であった五福谷川、新川において、図-1に示す箇所について現地調査を実施した。通行止め等により調査箇所は限られたが、空中写真・現地写真等より確認された主な土砂移動現象および災害形態は以下の通りである。

① 崩壊・支渓流からの土砂流出等に起因する緩勾配区間での土砂・洪水氾濫
 (五福谷川薄平地区・新川飯塚地区等)
② 高次谷における渓岸侵食、支渓流からの土砂流出による家屋・主要道路の陥落、筆甫地区の孤立
 (五福谷川薄平地区、丸森霊山線、丸森梁川線等)
③ 堤防決壊や溢水による氾濫(内川・五福谷川・新川築堤下流域)

3.1 内川
 内川中流域では内川本川の流量増加に伴う渓岸侵食や支渓流における土砂流出に伴い、主要道路である県道45号丸森霊山線(図-1参照)が陥落し、内川上流に位置する丸森町筆甫地区では10月17日まで孤立状態となっていた。現地調査を実施した11月2日時点でも復旧はしておらず、内川沿いの道路は通行不可であった。
 内川源頭部より約2.5km下流の小筆甫地区周辺では平均河床勾配が1/46程度であり、災害前の低水路幅は約5m 〜10m程度であったが、出水により護岸の裏側や農地が侵食され、下流の河道内および河道外の農地に土砂が堆積していた(図-2)。

(図-2)小筆甫地区周辺の内川本川の氾濫状況

 鷲ノ平川合流点下流に配置されている宮城県所管の上滝堰堤(堤高6.4m平常時堆砂勾配1/68(LPより推定))では、災害前は堆砂敷に砂州が形成されており低水路幅が約20mであったところ、出水後には砂州が消滅し、河道幅が50mまで拡幅していた(図-3)。

(図-3)内川本川の上滝堰堤堆砂状況

 奈良又川の合流点上流(河床勾配1/50)に位置する馬越道橋(図-4)では橋梁に多くの流木が捕捉されており、橋梁の高さ以上まで水位が上昇したと推定される。馬越道橋下流では左岸にて溢水による氾濫が生じ、細粒土砂が広範囲に堆積していた。

(図-4)馬越道橋付近の被害状況(国土地理院垂直写真に加筆)

3.2 五福谷川
 丸森町薄平地区では、五福谷川の河岸侵食、土砂・洪水氾濫および0次谷の左支川からの土砂流出により家屋の流出・損壊等の被害が生じた(図-5)。

(図-5)薄平地区における土砂移動状況(上)(国土地理院垂直写真に加筆)

 薄平地区の下流に架かる薄平橋では流木や土砂によって閉塞したと考えられる(図-6)。

(図-6)五福谷川における橋梁の閉塞

 この上流で土砂・洪水氾濫が生じており、河道が右岸側に屈曲したのち拡幅しており、河岸侵食による家屋・道路の流出が顕著であった(図-7、8)。

(図-7)薄平地区における土砂・洪水氾濫

(図-8)五福谷川における河道状況

 左岸側では左支川の土砂流出に由来すると想定される流木や大礫に加え、細粒土砂が広く堆積している状況であった(図-9)。それぞれの土砂移動現象の発生タイミングは不明であるが、複数箇所からの土砂移動に伴い甚大な被害が生じたと想定される。

(図-9)薄平地区左支川からの土砂流出

3.3 新川
 新川の下流域では土砂・洪水氾濫が発生し、丸森町飯塚地区において家屋の流出・損壊等の被害が生じた(図-10)。

(図-10)新川下流域飯塚地区周辺の被害状況

 新川左岸側の県道101号丸森梁川線は渓岸侵食により陥落し、通行不可となっていた(図-11)。

(図-11)新川調査箇所
(上左)丸森梁川線被災状況 (上右)渓岸侵食により大礫が河道内に堆積
(下)右岸侵食跡 側岸から大礫が生産されている

 河道内には直径2m超の大礫が堆積しており、渓岸に同様の礫が含まれているのが確認できたことから、渓岸侵食により生産されたものと考えられる。この地点は河床勾配が1/17程度となっており狭窄部であることから、出水時には土砂の流送が卓越したと考えられる。この地点から400m下流にある宮城県所管の土ヶ森堰堤は勾配変化点となっており、堰堤の堆砂敷では土砂の堆積により植生が埋まっている状況であった(図-12)。

(図-12)土ヶ森砂防堰堤 (上)堰堤堆砂敷 (右下)堰堤堆砂敷上流 (左下)堰堤上流 狭窄部

 堰堤下流の飯塚地区における河床勾配は1/40程度となっており、上流から流出した土砂や渓岸侵食により供給された土砂は、緩勾配で拡幅部となる飯塚地区において土砂が堆積し、氾濫が生じた一因となったと考えられる。

4.まとめ
 内川、五福谷川、新川における現地調査を実施した結果、山腹崩壊や支渓流からの土砂流出のほか、比較的流量の大きい高次谷における渓岸侵食の発生によって家屋被害、道路の陥落被害が生じていることが分かった。流木の堆積状況等から、著しい水位上昇があったと推定され、豪雨により流量が著しく増加し、出水前の河道における通水能力をはるかに上回る状況であったと考えられる。
 今回の災害では、LPデータの差分解析によると山腹崩壊による生産土砂量が約600千m3であるのに対し、渓岸侵食は約400千m3、河道由来のものは約600千m3であると報告されており(滝澤ら、2020)、上流域からの土砂流出のみならず、渓岸侵食による河道への土砂供給量が多かったことも、土砂・洪水氾濫が発生した要因の一つであると考えられる。
 内川流域では災害後に直轄砂防災害関連緊急事業が実施され、令和元年11月22日より東北地方整備局仙台河川国道事務所に宮城南部復興事務所出張所が設置されていた。令和2年4月1日より宮城南部復興事務所が新たに設置され、災害復旧事業のさらなる迅速化が期待される。
本調査に協力いただいた東北地方整備局に感謝を申し上げるとともに、被災地においてはいち早く復旧することを願います。

参考文献
1) 井良沢ら:2019年10月台風第19号による東北地方における土砂災害、砂防学会誌、Vol.72 No.6、p.42-53、2020
2) 気象庁仙台管区気象台:宮城県災害時気象資料 令和元年台風第19号による大雨と暴風・高波(令和元年10月11日〜13日)、
https://www.jma-net.go.jp/sendai/yohou/saigaijisokuhou/20191017miyagi.pdf、参照2020-6-8、2019
3) 国土地理院:令和元年(2019年)台風19号に関する情報 空中写真(垂直写真(速報)・斜め写真・正射画像・正射画像(速報))、https://www.gsi.go.jp/BOUSAI/R1.taihuu19gou.html#10、参照2020-6-8、2019
4) 国土地理院:令和元年(2019年)台風19号に伴う斜面崩壊・堆積分布図、
https://maps.gsi.go.jp/#11/37.872588/140.725964/&base=std&ls=std%7C20191012typhoon19_syamenhoukai
_taiseki&disp=11&lcd=20191012typhoon19_syamenhoukai_taiseki&vs=c1j0h0k0l0u0t0z0r0s0m0f1&d=m、
参照2020-6-8、2019
5) 滝澤ら:2019年10月台風第19号による東北地方における土砂災害、令和2年度砂防学会研究発表会概要集、p.427-428、2020

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