研究成果報告会

 当センターでは研究開発助成事業ならびに自主研究における成果を報告する場として平成12年度より毎年、「砂防地すべり技術研究成果報告会」を開催しています。 砂防・地すべり等に関する最近の課題と解決への方向性、最新の技術的動向について広く情報を提供するとともに、当センターの活動の一端をお知らせすることを目的としています。


◇ 『平成30年度 砂防地すべり技術研究成果報告会』を開催しました。
 11月6日(火)、砂防会館別館シェーンバッハ砂防(東京都千代田区)において、『砂防地すべり技術研究成果報告会』を開催致しました。
 国土交通省・都道府県、公益法人・民間企業等より多数の方々にご参加いただき、センター職員と合わせて 268 名の参加者となりました。ここに改めてお礼申し上げます。
 なお、本報告会の発表論文集は当センターにて頒布しております。詳細はこちらです。

 【開会挨拶】
  (一財)砂防・地すべり技術センター
  理事長  南 哲行
 【来賓挨拶】
  国土交通省 砂防部 砂防計画課
  砂防計画課長 今井 一之 様
【発表 1 :土砂災害の多様性と地域性を考慮した土砂災害危険雨量の運用に関する検討】
 宇都宮大学 農学部森林科学科  教授 執印 康裕 様


(講演概要)
 東京都伊豆大島、広島県、宮崎県で過去に発生した土砂災害を対象として、素因としての地域特性および表層崩壊・深層崩壊・土石流といった土砂移動現象の多様性を反映することが可能な降雨指標の検討を行った。
 検討では降雨情報と空間分布モデル、あるいは降雨情報のみという2方向からのアプローチから提案した指標を用い、土石流の発生・非発生の応答関係から指標の有用性を議論した。
 提案された指標は、全国共通で運用されてきた土壌雨量指数をもとに確率年を使用する、直感的な把握のしやすさや運用の容易さを考慮したものとなっており、今後の土砂災害警戒情報の運用を考える上で意義のあるものであると考えられる。
【発表 2 :北海道「八幡の大崩れ」における風化・侵食・マスムーブメントの相互作用】
 筑波大学 生命環境系 助教 Thomas PARKNER 様


(講演概要)
 本研究では風化しやすい特徴をもつ蛇紋岩体に発生した崩壊地である北海道中央部の八幡の大崩れを対象とし、2017年後半~2018年前半にかけての冬季期間における風化プロセスが侵食・崩壊の相互作用に与える影響について検討した。
 対象箇所の4地点にて採取した蛇紋岩試料の物性分析と溶解実験を実施し、緑褐色の試料タイプには岩石内部に亀裂が多く含まれ、黒色試料タイプより強度が小さく、比較的風化が進行していると評価された。
 UAVによる写真撮影を2017年10月9日と2018年6月10日の2回実施し、高解像度地形図から分析したところ、2017/2018の冬季における侵食活動は低調であり、確認された斜面プロセスは小規模な岩盤すべりとスランプに限られたことが確認された。
【発表 3 :鋼製透過型砂防堰堤に作用する土石流荷重の推定に関する研究】
 防衛大学校 建設環境工学科 教授 香月 智 様


(講演概要)
 過去の災害事例の一部では、透過型堰堤の前面傾斜の有無によって破損状況に違いが見られるものの、既往研究において前面傾斜角が衝撃荷重に及ぼす影響に関する実験は見られない。
 本研究では、透過型堰堤に作用する荷重-時間関係を実験により計測し、前面傾斜角が及ぼす影響について検討するとともに、数値解析により実験の再現を行った。
 実験の結果、前面傾斜角が30°の場合の最大衝撃荷重は、0°の場合と比べ約20~30%低減した。数値解析でも実験結果を概ね再現することができた。
 更に礫同士の接触距離と衝撃荷重の関係を検証するために、捕捉実験体に前置減勢工を設置して同様の実験を行った。その結果、前置減勢工を設置することにより衝突荷重が低減されることが分かった。
【発表 4 :土石流の発生条件と氾濫・堆積までを考慮した適切な地形解像度の設定】
 京都大学大学院 農学研究科 助教 中谷 加奈 様


(講演概要)
 本研究では、土石流の発生条件から氾濫・堆積までを考慮した適切な地形解像度を検討することを目的に、災害事例から土石流の発生規模を三段階に分類し、解像度の異なる地形データを用いてシミュレーションを実施した。
 結果、小規模や中規模の土石流では、解像度の差が、特に流路の地形への反映に影響し、小規模では流路の段落ち等が危険度分布に影響することが示された。
 小・中規模では詳細な地形データを用いて流路や道路等の土地利用が再現できるメッシュの設定が望ましく、大規模な土石流では地形データの影響は小さい。
 今後も土石流渓流や地形データの情報収集や解析を行い、流量規模に対しての流路高/流動深などの指標を用いて、適切な解像度の提案を目指すものである。
【発表 5 :地震により不安定化したテフラ斜面における降雨による地すべりの発生機構及び災害軽減】
 京都大学 防災研究所 准教授 王 功輝 様


(講演概要)
 異常気象時に強震動を経験したテフラ斜面における土砂災害の発生危険度を的確に評価するため,南阿蘇村河陽高野台地区付近において発生した地すべりに対して詳しい調査を実施した。
 クラックの発生した地すべり地において,クラックを挟んだ伸縮計の設置及びクラックの内外への土壌水分計の設置を実施し,雨量計,気圧計と共に時間分解能の高い観測を実施した。
 その他,不撹乱試料に対する現場一面せん断試験,高精度表面波探査などを実施した。
 その結果,すべり面及び移動土塊の土質強度や表層から厚さ2m程度の低速度層及び深度2m付近にある難透水層の存在などにより,流動性の高い地すべりが発生しうることが推察される。
【発表6 :水害・土砂災害危険箇所と人的被害の関係に関する基礎研究】
 静岡大学 防災総合センター 教授 牛山 素行 様


(講演概要)
 自然災害により発生する犠牲者に対しての客観的な分析について、これまで十分な分析が実施されてきておらず、災害が起こる都度、感覚的・定性的な問題提起が繰り返されている実情がある。
 そこで、本研究では土砂災害および洪水災害による人的被害に関して、発生場所から見た近年の風水害犠牲者の特徴を分析するとともに、日本の風水害人的被害の経年変化とその傾向に対する一般的な認識等について検討した。
 その結果、土砂災害犠牲者については87%が土砂災害危険箇所付近で発生しており、近年の災害犠牲者の多くは、「想定外」の場所ではなく、あらかじめ公表されているハザードマップで危険性が示された箇所付近で生じているといえる等、自然災害による人的被害の発生メカニズムについて、実証的、定量的な分析から貴重な知見が得られつつある。
 【閉会挨拶】
  (一財)砂防・地すべり技術センター
  専務理事  大野 宏之

当日の会場の様子

過去の砂防地すべり技術研究成果報告会 実施概要

 平成29年度 砂防地すべり技術研究成果報告会の概要
 平成28年度 砂防地すべり技術研究成果報告会の概要

PAGE TOP