平成29年度 砂防地すべり技術研究成果報告会

『平成29年度 砂防地すべり技術研究成果報告会』を開催しました。

 11月14日(火)、砂防会館別館シェーンバッハ砂防(東京都千代田区)において、『平成29年度 砂防地すべり技術研究成果報告会』を開催致しました。 国土交通省・都道府県、公益法人・民間企業等より263名の方々にご参加いただきました。ここに改めてお礼申し上げます。なお、本報告会の発表論文集は当センターにて頒布しております。詳細はこちらです。

【開会挨拶】
  (一財)砂防・地すべり技術センター 理事長  南 哲行
【来賓挨拶】
  国土交通省 砂防部 砂防計画課 地震・火山砂防室長 城ヶ﨑 正人 様
【発表1:天然ダム崩壊プロセスの違いが流出ハイドログラフに与える影響に関する研究】
 立命館大学 理工学部 都市システム工学科 教授 里深好文 様


(概要) 天然ダムが進行性破壊による決壊が下流域に及ぼす影響の解明を目的として、小規模実験水路を用いた実験を実施した。 流出量に着目した実験では、決壊(越水)時のダム高がピーク流量に大きな影響を与えることが確認された。また、大規模な崩壊に伴い崩壊土が水によって押し流された場合に流出流量のピークが極端に上昇することが確認された。 天然ダムの崩壊プロセスに着目した実験では、粒径大きく、湛水位が高い場合に崩壊の遡上が速くなることが確認された。粒径の違いにのみ着目すると、粒径の違いが流出ハイドログラフに与える影響は小さいことが確認され、湛水位が違う場合は、湛水位が高い方が流出ピーク流量は大きくなることが確認された。
【発表2:土砂災害規模の定量的評価手法に基づく大規模土砂災害の特徴と社会的影響に関する研究】
 北海道大学大学院 農学研究院 国土保全学研究室 特任教授 小山内信智 様


(概要) 土砂災害の規模を定量的に評価する指標である「土砂移動マグニチュード(SMM)」、「被害レベル(DL)」とこれらを基に区分した「土砂災害スケール」を使って、現行の土砂災害警戒情報が想定する状況を超えるレベルとなる、記録的な大雨等に対応する土砂災害に関する防災気象情報の発表基準について検討した。 その結果、超過確率年30~50年程度の降雨が大規模土砂災害の発生目安となること、長期降雨型の事例で大規模な土砂災害の発生誘引となり可能性が高いことが明らかになった。 また、同指標で平成28年台風10号豪雨による土砂災害(北海道十勝地方)の規模を評価したところ、SMMは8.59、DLは1.45と算出され、土砂災害スケールはCategory IVに分類される規模の災害であったと評価された。
【発表3:鋼製透過型砂防堰堤の縦材純間隔が流木混じり土石流の捕捉機能に及ぼす影響について】
 防衛大学校 建設環境工学科 講師 堀口俊行 様


(概要) 土石流中に流木が混じることで透過型砂防堰堤の捕捉性能に影響を及ぼすと考えられるため、流木の混在を考慮し縦材純間隔を設定することが望ましいと考えられる。 本研究では、縦材純間隔及び流木容積率が流木混じり土石流の捕捉効果に与える影響、並びに流木の樹根が混じったときの捕捉効果について検討することを目的として、流木の捕捉実験を行うとともに、数値解析により実験の再現を行った。 実験の結果、縦材純間隔が2.0までは流木が混じることでほぼ完全に捕捉されたが、2.5になると流木容積率が10 %の場合でも捕捉率が顕著に減少した。また、巨礫を含まない土石流において後続土砂の捕捉には、流木樹根等が閉塞することによる効果が大きいものと考えられた。数値解析では実験結果を良く再現することができた。
【発表4:鉄砲水や土砂流出による災害発生予測制度向上にむけた出水時の産地感染の水理特性解明】
 東京大学大学院 農学生命科学研究科付属秩父演習林 講師 浅野友子 様


(概要) 山地流域における急激な出水による災害予測精度の向上に向け、本研究では大きな水位上昇を引き起こす流域側の要因について検討した。 本報告では、山地流域で大きなピーク流量・水位が生じる要因について、既往研究成果および現地観測結果から、斜面の降雨に対する応答の早さと河道抵抗の高さが関連することを指摘した。 また、河道抵抗に大きな影響を及ぼす河床形状の新たな計測技術(グリーンレーザー)について報告した上で、降雨に対する斜面の早い応答や大きい河道抵抗の実態を明らかにし定式化するための課題として、短い時間間隔での豪雨時出水観測データの蓄積および、上流域の河川地形での抵抗特性や支配要因の整理の必要性を指摘した。
【発表5:材料特性を考慮した土石流扇状地の形成過程に関する水路実験と評価手法の開発】
 東京大学大学院 農学生命科学研究科 准教授 堀田紀文 様


(概要) 土石流扇状地の形成過程において、水路実験では均一粒径に近い材料が用いられるのに対して、実際の土石流の粒度分布は幅広く、土石流材料の粒度分布によって扇状地の形成過程が異なることが報告されている。 本研究では,粒度分布が及ぼす土石流扇状地の形成過程の変化及び得られた結果を数値シミュレーションと比較することで,土石流扇状地/氾濫域の予測を行う際の問題点及び今後の研究課題を抽出することとした。 実験は均一粒径と混合粒径のケースで実施したが、均一粒径の最終的な土石流扇状地形状に比べて、混合粒径では主流方向の偏りや、その後の首振り等で扇状地の最終形状は多様なものとなった。数値シミュレーションの比較ではより実態に近い結果が得られたが、混合粒径の土石流で見られた首振りによる扇状地の形成過程やその影響は評価できないことがわかった。
【活動報告1:「平成29年7月九州北部豪雨」による土石流災害の調査報告】
 (一財)砂防・地すべり技術センター 砂防部長 長井義樹


(概要) 本調査は、「平成29年7月九州北部豪雨」で被災した福岡県朝倉市及び朝倉郡東峰村において、土石流の堆積厚分布、家屋の被害状況、土石流の発生・流下実態、土石流ピーク流量を確認した。また、UAVでの空撮により、土砂の生産域、土石流氾濫範囲について調査した。 災害時の気象概要として、被災地周辺の朝倉、角枝、鶴河内、田篭観測所における雨量を確認した。時間雨量の経過を見ると、7月5日の12時頃からまとまった雨が降り始め、同日夜21時頃まで雨が降り続いていた。5日24時の時点で、朝倉、鶴河内における累積雨量が500 mmを超えており、朝倉における7月の平均月雨量(354 mm/月)以上の雨が、7月5日に降ったことが確認された。 現地調査結果として、福岡県朝倉市黒川地区では流木や巨礫の直撃による被害が、同疣目地区では狭小部への流木の堆積を起因とした、大規模は土砂堆積による被害が、福岡県朝倉郡東峰村宝珠山地区では土石流の流下による被害が、それぞれ確認された。
【活動報告2:不透過型堰堤に流木捕捉機能を付加する方法】
 (一財)砂防・地すべり技術センター 砂防技術研究所 次長 嶋丈示


(概要) 土石流は流木を伴って流下するため、土砂災害被害を拡大する要因のひとつであり、流木捕捉機能は土石流対策と切り離すことはできない。現在、土石流区間の不透過型砂防堰堤に流木捕捉機能を持たせる方法としては、堤体を鋼製透過型砂防堰堤にする方法と、不透過型砂防堰堤の副堤に流木捕捉工を設置する方法があり、本堤に鋼製透過型砂防堰堤を選択するのが基本である。 不透過型砂防堰堤に流木捕捉機能を付加する場合、水通し部の切欠きや嵩上げなどを伴うため、工期と工費を要する。そこで、本検討では、既設の不透過型砂防堰堤に流木捕捉機能を付加する一つの方法として、張り出しタイプの流木捕捉工法を提案した。この方法は、流木捕捉工を水通し部の上流に流木がすり抜けない程度上流から離れた位置に単独で配置する。これにより、本堤に極力手を加えず、水通しの機能も損なわずに流木捕捉効果を経済的に付加できる。また、流木捕捉工が破損した場合においても、堰堤の機能を維持したまま流木捕捉工のみの補修が可能といった維持管理性でのメリットも得られる。 今後、設計の簡略化やコスト縮減に向けて、流木捕捉工の部材間隔や透過部高さの標準化が課題である。
【閉会挨拶】
  (一財)砂防・地すべり技術センター 専務理事 大野 宏之
当日の会場の様子
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