技術支援実績

■技術支援実績
    これまでに実施した技術支援について、過去約5年の主な実績を以下に紹介します。
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技術支援種別一覧(タイトルをクリックすると当該箇所へ移動します)
(1)砂防構造物に関する技術支援
(2)ソイルセメントに関する技術支援
(3)砂防計画に関する技術支援
(4)地すべりに関する技術支援
(5)技術基準・マニュアル等に関する技術支援
(6)数値シミュレーションに関する技術支援
(7)土石流監視機器に関する技術支援
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(1)砂防構造物に関する技術支援

年度 指導題目 担当部 指導内容
2022 福島県(町田沢)無流水渓流対策に関する技術支援 砂防技術
研究所
 本技術支援は、常時流水のない無流水渓流における対策施設の配置および選定方針について指導を行ったものである。
当該堰堤は地耐力が低く、計画地までの道路が狭いことから、重力式コンクリート堰堤のような大規模な構造物は不向きであり、簡易な構造物で対策する必要があると説明した。また、現地では礫がほとんどなく、礫および土砂の移動距離が短いことから、細粒土砂や泥水が下流側に抜けた場合においても前庭部で一時的に貯留できるよう堆積工(かご枠)を計画基準点に配置して、上流側には鋼製透過型砂防堰堤を配置することが望ましいことを指導した。また、鋼製透過型堰堤については鋼管に限定せず、形鋼を使用するなど透過面に対策を施すことを提案した。
2022 福島県(松沢)無流水渓流対策に関する技術支援 砂防技術
研究所
 本技術支援は、常時流水が無い無流水渓流における対策施設の選定方針について指導を行ったものである。
当初計画では最大礫径が小礫であることから、不透過型砂防堰堤を配置する計画であったが、無流水渓流対策の知見が少ないことや、地耐力が低いことが懸念事項であった。当該堰堤は計画規模が小さく、土石流形態となって流下する可能性は低いため、コンクリート不透過型砂防堰堤のような大規模な構造物ではなく、無流水渓流対策に準じて簡易で軽量な構造物を配置することを指導した。また、堰堤を越流する計画規模ではないため、前提保護工および流木止め工も不要であることを説明した。現地では無流水渓流ではあるものの、比較的谷筋が明瞭であったことから、軟弱地盤に追随することができるコンクリートブロックを配置することを提案した。
2022 青森県(小松野川1号堰堤)老朽化対策に関する技術支援 砂防技術
研究所
 本技術支援は、老朽化による機能低下が懸念されている不透過型砂防堰堤の改築方法および水理模型実験について指導を行ったものである。
当該堰堤は計画基準点における整備率は低く、軟弱地盤であることから、整備率の向上および構造物の軽量化を図るため、越流部を透過型に改築することを説明した。また、当該地では砂防堰堤が階段状に連続配置されており、流送形態は集合運搬から各個運搬に移行する可能性があるため、水理模型実験で不透過型堰堤や透過型堰堤を連続配置した場合における捕捉効果を確認する必要があることを指導した。実験結果より全て透過型に配置した場合の堰堤群が最も捕捉効果が高かったことを確認し、下流に配置した透過型砂防堰堤は上流に配置した堰堤よりも部材間隔を狭めることを提案した。
2022 青森県(小松野川5号堰堤)老朽化対策に関する技術支援 砂防技術
研究所
 本技術支援は、老朽化による機能低下が懸念されている不透過型砂防堰堤の改築方法および水理模型実験について指導を行ったものである。
当該堰堤は計画基準点における整備率は低く、軟弱地盤であることから、整備率の向上および構造物の軽量化を図るため、透過型に改築することを説明した。また、現行基準に基づいて設計した場合、必要天端幅の不足による腹付けおよび計画規模の流量を処理するための嵩上げ等の問題が懸念されていたため、水通し幅のみならず地山に陥入しない箇所全ての幅を透過型に改築し、水通し断面を確保することを提案した。
2022 熊本県土砂・洪水氾濫対策に関する技術支援 砂防部  本技術支援は、掃流区間における土砂・洪水氾濫対策において対策施設の配置及び選定方針の指導を行ったものである。
当該箇所は設計流量が大きいことと、河道の屈曲が著しいことが課題となっていた。そのため、以下の点を考慮して配置計画を行うこと指導した。
(1)設計流量については実績流量を優先する
(2)平常時には満砂せず、洪水時により確実に土砂を捕捉できる横ビーム堰堤を配置する
横ビーム堰堤においては本州では設置事例がなかったため、副堤スリットの形状および数値計算における施設効果検証方法についても助言を行った。また、設置予定箇所の左岸側には生活道路である県道が通っていることもあり、川幅が広く、県道の迂回道路の確保が容易な箇所を砂防堰堤位置とすることを提案した。
2022 中ノ沢筋 砂防(交付(再復))工事(砂防えん堤) に関する技術支援 砂防技術
研究所
 本技術支援は、透過型砂防堰堤の施工時の法面崩壊対策と非越流部に用いるINSEM-ダブルウォール工法の設計について指導を行ったものである。
堰堤計画地の右岸部法面は固結度の低い火山灰質土であり、掘削後、吹き付け工によっても安定化しなかったため、極力掘削や吹き付けを繰り返さずに、法面勾配を計画値から土砂の安息角まで下げるように指導した。法面崩壊の原因は植生によって安定化していた固結度の弱い火山灰質土を掘削したことであり、堰堤開口部の床掘時にも右岸法面が崩壊するため、床掘深さの再検討についても助言した。また、不安定な現場条件であることからダブルウォール工法に用いるINSEM 材の圧縮強度を標準値よりも向上させ、堤体の変形を防止することを指導した。
2022 令和3年度尾添川流域流木対策施設設計業務 に関する技術支援 砂防技術
研究所
 本技術支援は、大暗渠砂防堰堤に流木捕捉機能を付加する方法に関するもので、前年度の技術支援(水理模型実験)から引き続き、施設構造の具体的な構造、設計に関して指導を行ったものである。
当該堰堤は土砂調節効果と流木捕捉効果を両立することが必要であったため、堰堤上流側に張出しタイプ流木捕捉工を設置し、暗渠には流木流出防止工を設置する構造を提案した。また、流木捕捉工と流木流出防止工それぞれの具体的な形状や構造計算方法および施工上の課題(段階施工の方法、捕捉工と流出防止工の部材干渉の回避方法等)についても検討・指導を行った。さらに、本堤の暗渠部の応力計算法についても助言を行った。
2022 令和3年度 湯沢砂防事務所管内流木対策施設設計業務 に関する技術支援 砂防技術
研究所
 本技術支援は、既設の不透過型砂防堰堤に流木捕捉機能を付加する方法について指導を行ったものである。
当該堰堤は、土砂整備率が100%未満の渓流であったため、張出しタイプ流木捕捉工等の他の後付式流木捕捉工ではなく、本堤を切欠き、透過型構造にすることで、流木捕捉機能と合わせて捕捉土砂量を向上させるように指導した。また、現地の樹木の状況(枝葉が多い)から流木による透過部の閉塞防止や前庭部との落差を小さくし、前庭保護工への影響を小さくすることを考慮し、本堤を切欠く領域については、施工上可能な範囲で広く深く切欠くよう助言を行った。
2021 R2早川管内砂防施設設計業務(鋼製透過型砂防堰堤)に関する技術支援 砂防技術
研究所
 本技術支援は、富士川水系早川管内の4渓流において新設する鋼製透過型砂防堰堤の設計について指導を行ったものである。当該堰堤の設計外力があまりに大きく設計が困難であるため、以下の検討が必要になることを提示し、それらの検討方法を指導した。
Ⅰ.実態に即した設計外力の設定(①土砂量の見直し、②礫の衝突速度の見直し)
Ⅱ.施設構造の工夫(Ⓐ減勢工の設置、Ⓑ部分透過構造の検討、Ⓒ緩衝材の設置)
また、採用された施設構造の具体的な指導として、緩衝材に必要な機能(鋼管径、板厚、許容変形量、継手仕様)についても指導した。その他にも、狭窄部に設置する堰堤について、左右岸の切り立った露岩を活用することで、袖部(非越流部の施工)を不要にするという、経済性と施工性に優れた方法について提案・指導した。
2021 厚真川水系日高幌内川流木対策施設検討業務に関する技術支援 砂防技術
研究所
 本技術支援は、ブロック堰堤の上流側に流木捕捉工を取り付ける方法、および流木による堰上げ量確認のための水理模型実験について指導を行ったものである。当該ブロック堰堤の上流側に流木捕捉工を付加する方法として、①ブロック堰堤への直付け案、②張出しタイプ(堆砂敷設置)案の2案を提案し、どちらでも設置が可能であることを示し、各案の設置方法を指導した。また、捕捉工によって増加する堰上げ水深を模型実験で確認するように指導し、実験時には流木捕捉と堰上げ抑制を両立させるブロック配置・流木捕捉工配置についても助言した。
2021 景観に配慮した砂防堰堤に関する技術支援 砂防技術
研究所
 本技術支援は、国立公園内に位置し、景観に配慮する必要がある新設砂防堰堤の設計について指導を行ったものである。当該堰堤は、景観への配慮から周辺地形とのスケール感を合わせ、調和を図るために堰堤高さを低く抑え、かつ開口部を広くとる複断面の鋼製透過型砂防堰堤の設計方法について指導を行った。袖部を透過型構造にすることで、一般的なコンクリート構造の袖部と比較して軽量となるため、景観性の向上だけでなく、当該地で問題であった地耐力不足の問題も解決できることを提示した。また、最大礫径に相当する礫個数が少ないという、当該地における鋼製透過型堰堤の部材間隔の設定方法についても助言を行った。
2021 既設不透過型砂防堰堤の老朽化対応に関する技術支援 砂防技術
研究所
 本技術支援は、不透過型コンクリート砂防堰堤の老朽化対応の方法について指導を行ったものである。当該既設堰堤は劣化が著しく、亀裂、漏水、基礎地盤の地耐力不足による沈下、現行基準における必要天端幅の不足等の問題が見られため対策が必要であると助言した。また、老朽化対応として考えられる対策案(①砂防堰堤の新設案、②腹付け工案、③鋼製透過型堰堤への改築案)と各案の留意点を挙げ、上記の問題を解決する方法として鋼製透過型砂防堰堤への改築に関する具体的な設計(改築範囲設定、型式設定)について指導を行った。
2021 既設不透過型堰堤に流木捕捉機能を付加する方法に関する技術支援 砂防技術
研究所
 本技術支援は、既設の不透過型コンクリート砂防堰堤に流木捕捉機能を付加する方法について指導を行ったものである。当該堰堤は、①前庭部が小さいため、副堤設置の流木捕捉工では捕捉量が不足すること、②掃流区間であり堆砂敷が満砂状態であること、③既設堰堤の水通し断面は計画規模を10年超過確率としており、現行指針に基づくと断面が足りないこと、以上3点から既設堰堤上流側に流木捕捉工を凸型に配置し、見掛けの水通し幅を広くとることで堰上げを抑制する方法を説明した。また、流木捕捉工の基礎に関して、H形鋼と根固めコンクリートを活用することで河川の閉め切り期間を短縮できる井桁式基礎の事例を提示した。
2021 令和2年舛玉第2砂防堰堤出水後調査・対策検討業務に関する技術支援 砂防技術
研究所
 本技術支援は、令和2年に被災した鋼製透過型砂防堰堤の調査および今後の対応方法について技術支援を行ったものである。当該堰堤は出水により基礎コンクリートの打継ぎ目から分離し下流側に動いているため、被災メカニズムを把握するには施工写真から1次コンクリートの打設後の表処理方法等を確認すべきであると指導した。また、被災後の対策方針としては、当該堰堤を流木捕捉工の位置づけとし、透過型構造から部分透過型構造とすることが望ましいことを提案した。その他、曳家工法を用いて2次コンクリートをリフトアップする場合は、打設面を極力処理せずに打継ぎ面に鉄筋やH形鋼を挿入し、せん断抵抗を向上させるべきであると指導した。
2021 床固工上流に流木捕捉工を設置する方法および水理模型実験に関する技術支援 砂防技術
研究所
 本技術支援は、張出しタイプ流木捕捉工としての設計が困難な施設の設計方法、および水理模型実験について技術支援を行ったものである。当該施設は床固上流に設置する新設の流木捕捉工であったが、袖部がほとんどないため、堰上げを回避するための通水断面が確保しづらい施設であった。そこで、当該箇所を模擬した水理模型実験の実施を提案し、当該箇所における流木捕捉工の効果的な配置と流木捕捉量の考え方を解説した。
2020 新設する不透過型砂防堰堤に流木対策工を付加する方法に関する技術支援 砂防技術
研究所
 本技術支援は、宮崎河川国道事務所管内の2渓流において新設する不透過型砂防堰堤に流木対策工を付加する方法について助言を行ったものである。対象渓流は常時流水がなく、渓流内は火山灰と軽石のみで礫が認められなかった。一方で、流木容積率は約20%と非常に高く、流木対策のため透過構造が必要であった。このため、既設不透過型砂防堰堤の流木捕捉機能向上を目的として開発された「張出しタイプ」流木捕捉工を新設する方法を提案した。また、「張出しタイプ」流木捕捉工を採用するにあたっての留意点についても言及した。
2020 コンクリートスリットと鋼製スリット(複合構造)の砂防堰堤の水理模型実験に関する技術支援 砂防技術
研究所
 本技術支援は、①掃流区間においてコンクリートスリットの堰上げ効果による土砂捕捉、②鋼製スリットによる流木捕捉および堆積土砂の二次移動防止、の二つを目的とした複合構造の砂防堰堤の水理模型実験について、指導および助言を行ったものである。土砂捕捉効果の確認実験については、堰上げ効果により堆砂肩が形成されることで、想定どおりの土砂捕捉効果があったことを確認した。流木捕捉効果の確認実験については、流木が数%程度通過したものの、大半の流木は捕捉され、想定どおり流木捕捉効果が確認できた。
2020 主に最下流に設置する鋼製透過型砂防堰堤の設計に関する技術支援 砂防技術
研究所
 本技術支援は、青森県内の8渓流における新設の砂防堰堤に対し、主に最下流に設置する鋼製透過型砂防堰堤の設計方法ついて、指導および助言を行ったものである。青森県管内の土石流危険渓流の特徴として、礫径が小さく、計画流出流木量が多いことが挙げられる。このような条件下における鋼製透過型砂防堰堤の部材間隔の設定方法や、新設する不透過型砂防堰堤に流木対策工(張出しタイプ)を付加する際の考え方について助言した。また、景観に配慮する必要がある場合において、周辺環境に対して不自然になることなく、環境に溶け込んだ砂防施設の具体的設計手法について助言した。
2020 老朽化した既設石積み砂防堰堤の段階的補強方法に関する技術支援 砂防技術
研究所
 本技術支援は、和歌山県内の2渓流における老朽化した既設石積み砂防堰堤の段階的補強方法について指導および助言を行ったである。段階的補強方法として、主に5つの工法(①腹付け工および嵩上げ工②堤冠保護工③洗掘防止工④袖部保護工⑤導流工)を挙げ、それぞれの方法に対し補強目的・使用材料・施工範囲の考え方について助言した。また、既設石積み堰堤の安定性の評価方法として、実際の砂防堰堤の破壊事例を踏まえて留意点を挙げるとともに、段階的補強対策の必要性を判断するための施設の安定条件の考え方を提示した。
2020 流木対策工および大暗渠砂防堰堤の水理模型実験に関する技術支援 砂防技術
研究所
 本技術支援は、満砂した既設の不透過型砂防堰堤に流木対策工を付加する方法および新設する大暗渠砂防堰堤に流木捕捉機能を付加する検討について助言を行ったものである。既設の不透過型砂防堰堤に流木対策工を付加する方法として、袖部と比べて水通し部が長いことから、凸型に流木対策工を配置することにより、見かけ上の水通し幅を広げ、越流しない形状を提案した。また、摩耗対策として必要な鋼管板厚を提案した。大暗渠砂防堰堤の水通し部および暗渠部に流木対策工を付加することによる流木捕捉機能の向上について、水理模型実験においてその効果を確認した。また、流木捕捉工の設計方法にも言及した。
2019 満砂した砂防堰堤に流木対策工を付加する検討に関する技術支援 砂防技術
研究所
 本技術支援は、満砂した既設の不透過型堰堤に流木対策工を付加する方法についてのものである。計画地点付近の元渓床勾配は1/30であるが、現在は堆砂により1/38程度の掃流勾配となっている。また、周辺に土石流勾配を呈する主要支渓も存在しないことから、張出しタイプの流木捕捉工(満砂型)を提案し、構造諸元については掃流区間の流木対策工に準じて設計を行うよう助言を行った。また、本現場は捕捉部材の高さが5mと流木捕捉工としては比較的高くなるため、横倒れ防止のため連結構造(ユニット構造)とすることを提案した。
2019 未満砂状態の既設砂防堰堤に流木対策工を付加する検討に関する技術支援 砂防技術
研究所
 本技術支援は、未満砂状態の既設不透過型堰堤に流木捕捉工を付加する方法についてのものである。張出しタイプの流木捕捉工(未満砂型)は本堤と直接接続させるため、本堤の健全度および本堤が土石流対策施設として設計・施工されているかを確認する必要がある。対象の堰堤は旧土石流・流木対策設計技術指針で設計・施工されており、現行指針に則り再度検討したところ土石流時の安定条件を満たさなかったため、本堤と一体で打設された基礎地盤間詰めコンクリートを堤体の一部として安定計算を行うよう提案した。また、部材の間隔や高さの考え方について助言を行った。
2019 土石流区間に位置する水系砂防施設の改築に関する技術支援 砂防技術
研究所
 本技術支援は、土石流区間に位置する連続した既設不透過型堰堤(ハイダム)2基について、流木捕捉機能付加の設計に対するものである。両堰堤とも水系砂防施設として設計された不透過型堰堤であり、改築には用地買収不可、水通し断面の不足および拡幅不可等の制約があった。技術支援では上記の制約条件、水系砂防施設かつ土石流区間であることを考慮し、上流側堰堤と下流側堰堤で違う改築方法を提案した。上流側堰堤は土石流形態で流下しない区間でも土石捕捉機能を発揮させるように部材間隔を最多礫径帯の最大値とする改築が適切であり、下流側堰堤では水系砂防施設としての機能を保持するように、水通しを拡幅するとともに張り出しタイプの流木捕捉工の設置を提案した。
2019 コンクリートスリットおよび鋼製スリットの複合構造の設計に関する技術支援 砂防技術
研究所
 本技術支援は、現河床勾配1/45の掃流区間においてコンクリートスリットの堰上げ効果による土砂捕捉と合わせて、後続流や常時流水における堆積土砂の二次移動を、コンクリートスリット内に設置した鋼製スリットにより防ぐことを目的とした複合構造の砂防堰堤の設計に関するものである。コンクリートスリットと鋼製スリットの役割の違いを踏まえ、適切にコンクリートスリットの幅、対象礫径、鋼製スリットの部材間隔、作用する外力、堤高および水通し幅などを設定するよう、設計の考え方について助言を行った。
2019 不透過型堰堤(ハイダム)の透過型への改築に関する技術支援 砂防技術
研究所
 本技術支援は、既設不透過型堰堤(堤高15.0m)の透過型堰堤への改築方法に関するものである。堰堤の改築の目的は、土砂整備率及び流木整備率を100%とすることであり、支持地盤がD級、CL級の岩盤であることから、不透過型堰堤のまま嵩上げすることはできないため、透過型堰堤として改築できるかについて指導した。透過型堰堤の設計では動水圧や揚圧力といったH=15m以上の不透過型堰堤(ハイダム)の設計で考慮する荷重は作用させないことから、堰堤の高さが15m以上となる箇所を透過構造とし、残りの不透過部を高さ15m未満とすれば全断面においてH=15m未満のローダムの設計の考え方で統一できるなどの助言を行った。
2019 張り出しタイプの設計に関する技術支援 砂防技術
研究所
 本技術支援は、2基の既設不透過型堰堤における流木捕捉機能の付加に関して、張り出しタイプの流木捕捉工の設計について技術支援を行ったものである。1基目については、流木止めとして必要な高さや、安定計算の照査内容など、主に張り出しタイプの流木捕捉工の設計の基本的な考え方について助言を行った。2基目については、外壁に擬岩を使用している景観に配慮された堰堤であることから、張出しタイプの流木捕捉工の基本的な設計方法に加えて、堰堤本体同様に塗装の方法、表面の凹凸の工夫、部材間隔を不規則にするなど、景観を配慮する方法についても助言を行った。
2019 小規模渓流対策の考え方を取り入れた土石流対策に関する技術支援 砂防技術
研究所
 本技術支援は、小規模な土石流危険渓流に計画した新設堰堤に関するものである。計画地点は明瞭な谷地形を有し、常時流水も認められることから、水通し断面を設け堰堤下流の洗掘対策を講じた上で袖部の嵌入を人工地山による対策とするなどの小規模渓流対策の考え方を取り入れるように提案した。また、土石流対策では非越流部の天端厚は3m以上の確保する必要があるが、安定計算および構造計算を満たせば3m未満でもよいとするなどの助言を行った。
2018 レジリエンスな砂防堰堤設計手法に関する技術支援 砂防技術
研究所
 本技術支援は,湯沢砂防事務所管内で実施された打継ぎ目形状の違いによる安定性・施工性の比較調査に対して,調査内容の評価および強化策に対して助言をするものである。近年,計画規模を越えるような集中豪雨等によって発生する土石流により,重力式コンクリート砂防堰堤が打継ぎ目で破壊される事例が見受けられる。そこで事務所管内で打継ぎ目形状を凹型・凸型・L型とした場合と,水平打継ぎ目に鉄筋を挿入した場合の試験施工を実施することとなった。この施工に際して設計の考え方を評価するとともに,施工時の留意点や,H鋼による補強などの打継ぎ目強化策に関する着目点・評価手法について技術支援を行った。
2018 砂防堰堤の配置・構造に関する技術支援 砂防技術
研究所
 本技術支援は、小規模渓流で下流直下に保全対象がある砂防堰堤の設計についての技術支援である。流域面積は0.044km2および0.032km2の隣り合う2渓流で、渓床勾配i=1/1.6~1/3.7の土石流危険渓流である。堰堤は開口部をできるだけ広く確保した透過型とし、中小出水時と洪水時で流下断面を区別し、メンテナンスをし易くするように透過部を複断面とした。保全対象が堰堤設置箇所直下にあるため先行流の通過による被害も想定し、渓流1は堰堤直下に堆積工を設置することで防止することとした(渓流2は窪地があるためそこに溜まると判断した。)また、袖を地山に嵌入しようとすると袖折れ構造となり不経済であるため、袖の嵌入は掘削で発生する土砂をソイルセメントとして活用した人工地山を適用することで、コストにも配慮した計画となるよう助言を行った。
2018 大型砂防堰堤の嵩上改築に関する技術支援 砂防技術
研究所
 本技術支援は、特殊な事例である大型砂防堰堤(栃平砂防堰堤)の嵩上改築に伴う詳細設計に関する技術支援である。暫定計画により施工した砂防堰堤を、嵩上げにより完成形として施工するため、嵩上改築する砂防堰堤を現基準に適合した構造で、かつ安全で的確に施工するための設計を行うことを目的として技術支援を行った。また、設計審査会に参加し、技術的な助言を行い、適切な委託成果の検収に資するようにした。
2018 鋼製透過型砂防堰堤の改良に関する技術支援 砂防技術
研究所
 本技術支援の堰堤位置は東西渓流合流点直下に位置する透過型砂防堰堤(格子形堰堤)である。平成29年8月8日の台風5号により下流域へ土砂流出が見られたため,土砂流対策としてリングネット工を設置することとなった.本技術支援は、細粒土砂を捕捉するためにリングネットにより部材間隔を狭くするが、開口部全体をリングネットで覆うと常時流水による土砂も捕捉してしまうため、維持管理の面から下方を空ける必要がある。そこで、鋼製砂防構造物設計便覧の参考資料7を参考に、洪水時に堰上げを利用して貯留できるよう部材間隔を変更した。

(2)ソイルセメントに関する技術支援

年度 指導題目 担当部 指導内容
2019 ブラジル国鋼製透過型・ソイルセメント砂防堰堤普及促進事業に関する技術支援 企画部
国際課
 ブラジルでは近年大西洋岸沿いの都市部で土砂災害が多発し大きな被害を受けている。特に、2008年11月にサンタカタリーナ州で、2011年1月にリオデジャネイロ州で発生した土砂災害被害は甚大であった。ブラジルではこれまで土砂災害対策実施の経験に乏しく有効な対策は実施されていない。
本技術支援は、独立行政法人国際協力機構(JICA)が推進する民間連係事業の一環として、ブラジルにおいて日鐵住金建材株式会社が行っている鋼製透過型砂防堰堤(鋼製スリットダムB 型)およびソイルセメント砂防堰堤(SB ウォール工法)の普及事業に対して、現地活動2回及び本邦受け入れ活動に際して、技術的な観点等から支援を行ったものである。
2019 鶴島土地改良事業検討業務に関する技術支援 砂防技術
研究所
 本技術支援は、鶴島土地改良区管内で計画されている遊砂地工について、人工地山の施工および砂防ソイルセメントの活用を目的とした設計変更に関する、ものである。遊砂地工検討箇所の左岸側は県道に近接しており、左岸への嵌入が県道に影響を及ぼす恐れがあることから、県道の安全確保を考慮して、床固工袖部は地山に嵌入しないこととし、人工地山を施工する際の留意点についての助言を行った。また、遊砂地工については、砂防ソイルセメント工法を活用する上での留意点についても助言を行った。

(3)砂防計画に関する技術支援

年度 指導題目 担当部 指導内容
2019 蛇尾川流域砂防計画に関する技術支援 砂防部  栃木県大田原土木事務所管内の蛇尾川流域の谷出口から扇状地に至る約13.0kmの区間において、床固工17基、帯工9基、砂溜工1箇所の砂防事業全体計画が作成されている。全体計画は3工区に分けて進められており、昭和63年度から平成16年度にかけて事業を実施した最上流の1工区(L=4.0km)、平成17年度から平成22年度にかけて事業を実施した2工区(L=4.0km)、平成24年度から令和3年度にかけて事業を実施している3工区(L=4.7km)からとなる。既に1、2工区は事業が完了しており、3工区は上流域の施設整備が完了したことから、当初の全体計画で想定していた土砂移動現象と異なる土砂移動に関する課題が顕在化してきている。そのため、3工区の施設配置計画の見直しを行うこととなり、本技術支援はこの施設配置計画の見直しに関する技術的な助言を行ったものである。

(4)地すべりに関する技術支援

年度 指導題目 担当部 指導内容
2021 柳沢地すべり防止区域調査業務委託に係る技術支援 斜面
保全部
 本技術支援は、申請者が埼玉県より受託した「砂防維持修繕工事(柳沢地すべり防止区域調査業務委託)」における「①地すべりブロックの見直し結果」と「②今後の調査・観測体制」について技術支援を行ったものである。技術支援に先立ち、申請者より本地区地すべりの事業経緯や地すべりブロックの検討経緯、現地状況等について説明を受けた。①については「既往設定されている地すべり防止区域内に存在するブロックについて見直しを実施しているが、その根拠についての説明が必要である」事を指摘した。②について「ブロックの優先順位は、保全対象の重要度等からマトリックスを作成し、その結果を踏まえて設定されているので、今後の調査・観測計画は、その優先度に従って提案する」事、「優先度の高いブロックにおいては、観測機器の設置を提案することが必要である」事、そして「優先度が相対的に低いブロックの観測としては、年1~2回程度のGPS観測や現地状況(道路や擁壁等の構造物の変状や亀裂等)を確認する等の案も考えられる」事を指摘した。
2021 天竜川水系地すべり長寿命化計画に係る技術支援 斜面
保全部
 本技術支援は、申請者が中部地方整備局天竜川上流河川事務所より受託した天竜川水系地すべり長寿命化計画に関する業務について技術支援を行ったものである。この技術支援の主な趣旨は、上記事務所管内で直轄地すべり対策事業が実施されている此田地区及び中流地区における地すべり防止施設の長寿命化計画についての留意点に関してであった。
主な指導事項は次のとおりである。①此田地区に関しては、直接人命に関わる、という観点から、第一に集水井の天蓋部の点検・補修や集水井周辺地盤の沈下や緩みに留意して対応が必要な箇所を優先する、次に、その劣化が人家や公共施設に悪影響を及ぼすような環境にある防止施設を優先すべきである、②中流地区においては、対策事業が開始されて間もないことから、当面は施工年度順に劣化していく、と仮定した年次計画を立案する。
2021 下モ地すべり防止区域調査業務委託に係る技術支援 斜面
保全部
 本技術支援は、申請者が埼玉県より受託した「下モ地すべり防止区域調査業務委託」における「①地すべりブロックの安定度評価」と「②今後の調査・観測体制」について技術支援を行ったものである。技術支援に先立ち、申請者より本地区地すべりの事業経緯や地すべりブロックの検討経緯、現地状況等について説明を受けた。①については「現在変動しているブロックへの対策の効果を評価し、今後の対策工計画を効果的かつ効率的に進めていく為の観測・検討体制の整備が必要である」事を指摘した。②について「特に昨年度に対策工(横ボーリング工)が施工されたブロックについては、その対策効果を評価するための動態・地下水位観測孔が必要である」事、「その他のブロックについても、今後の対策計画を進めていく際には現状の地すべり安定度を把握しておくことが基本であり、安定解析の実施が可能となる様な地下水位観測孔の設置が重要である」事、そして「将来的に地すべり土塊の変形が進行していく可能性も考えられるブロックについては、継続的な動態観測、地下水位観測が重要である」事を指摘した。
2021 東秩父村上の山地すべりに関する技術支援 斜面
保全部
 本技術支援は、申請者が埼玉県より受託した「社会資本整備総合交付金(砂防)工事(上の山地すべり防止区域調査業務委託)」における「①地すべりブロックの見直し結果」と「②今後の調査・観測体制」について技術支援を行ったものである。技術支援に先立ち、申請者より本地区地すべりの事業経緯や地すべりブロックの検討経緯、現地状況等について説明を受けた。①については「現在の地すべり防止区域内に存在するブロックと、土砂災害防止法に係わる基礎調査で設定されているブロックに対して見直しを実施しているが、その根拠についての説明が必要である」事を指摘した。②について「ブロックの優先順位は、保全対象の重要度と地すべりの活動度からマトリックスを作成し、その結果を踏まえて設定することも一案である」事、「当面の対応として、ブロックの優先順位とは独立に現地状況(道路や擁壁等の構造物の変状や亀裂等)を踏まえて巡視ポイントを設定する」事、そして「ブロックの優先順位に応じた調査・観測機器の配置等を検討する」事を指摘した。

(5)技術基準・マニュアル等に関する技術支援

年度 指導題目 担当部 指導内容
2017 砂防技術指針(案)の改訂(案)作成業務 に関する技術支援 砂防部  奈良県土木部では、砂防技術指針(案)の改訂を行っており、本技指導は、改訂される指針(案)の記載内容、他の基準類等との整合性、引用、事例等の妥当性等について照査を行ったものである。現在、運用されている指針(案)は平成12年4月に作成されたもので、策定後既に19年を経過し、以降これまでに、土砂災害防止法の制定や砂防基本計画策定指針(土石流・流木対策編)、土石流・流木対策設計技術指針等が改訂されている。これら指針類の改訂の背景や主旨を踏まえ、奈良県の砂防技術指針(案)に反映すべき事項や内容について、技術的な助言を行った。

(6)数値シミュレーションに関する技術支援

年度 指導題目 担当部 指導内容
2021 福岡県土砂・洪水氾濫対策技術検討会等 に関する技術支援 砂防技術
研究所
 本技術支援は、福岡県が実施する土砂・洪水氾濫対策について、主にシミュレーションの計算条件設定方法と施設配置計画に関する指導を行ったものである。
福岡県が設置する「土砂・洪水氾濫対策技術検討会」により作成された「河床変動計算を用いた土砂・洪水氾濫対策に関する砂防施設配置検討のガイドライン(案)」に対して、保全対象の選定や流域分割方法、再現計算の対象とする実績と計算条件の設定方法、施設配置により実現する目標などを明確化することを助言した。
2020 福岡県土砂・洪水氾濫対策技術検討会等 に関する技術支援 砂防技術
研究所
 本技術支援は、福岡県が実施する土砂・洪水氾濫対策について、主にシミュレーションの計算条件設定方法と施設効果の表現方法に関する助言を行ったものである。
福岡県が設置する「土砂・洪水氾濫対策技術検討会」により作成された「河床変動計算を用いた土砂・洪水氾濫対策に関する砂防施設配置検討のガイドライン 計画編(暫定版)」に対して、再現計算により設定する計算条件と一般値を用いる計算条件の区分、また保全対象の設定方法、施設配置の目標などを明確化することを提案した。

(7)土石流監視機器に関する技術支援

年度 指導題目 担当部 指導内容
2020 人工地山と床固工および土石流センサの運用に関する技術支援 砂防技術
研究所
 本技術支援は、人工地山による袖部処理の適用および床固工の施工時期の判断に関する助言、並びに砂防工事完了後の土石流危険渓流の監視システム(土石流センサ)の運用について助言を行ったものである。対象となる砂防堰堤は未満砂状態で流水が袖の端部にあたらない不透過型堰堤である。人工地山により、①掘削土量や樹木の伐採量の低減②用地買収に伴う工事期間の短縮③斜面切土工事に伴う安全の確保、といった利点が多く、人工地山の適用性が高いことを助言した。また、床固工の施工時期については、現状で計画範囲に土砂が堆積しており、渓流内の堆積土砂が不安定化する恐れもあるころから、経過観察を継続することを提案した。
土石流センサの運用に関しては、工事中の安全対策としての位置付けであればすべて撤去することが基本であるものの、事情によりセンサが必要な場合として、現在設置されているセンサを必要最小限の数に縮小した運用案を提示した。

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