平成28年度 砂防地すべり技術研究成果報告会

◇『平成28年度 砂防地すべり技術研究成果報告会』を開催しました。

 11 月 22 日(火)、砂防会館別館シェーンバッハ砂防(東京都千代田区)において、『砂防地すべり技術研究成果報告会』を開催致しました。
 国土交通省・都道府県、公益法人・民間企業等より多数の方々にご参加いただき、センター職員と合わせて 151 名の参加者となりました。ここに改めてお礼申し上げます。
 なお、本報告会の発表論文集は当センターにて頒布しております。詳細はこちらです。

 

【発表1 :シナリオシミュレーションシステムを用いた低頻度災害時における避難行動要因の解明】
 静岡大学 教育学部 教授 村越 真 様


(講演概要)
 低頻度の災害時において、正常化バイアスによる避難行動の鈍化の要因を定量的に示すことを目的に、確度が違う警報と避難判断の関係についての研究を行った。
 研究内容は、被災リスクや避難コストを教示した上で、確度の違う災害情報に対し災害を予測あるいは避難を判断するという実験を行い、警報が避難判断にどう影響するかを検討した。
 検討の結果、警報の確度が高くなる程、避難率が高まるとことが示された。また、低確度で不確実性が高い条件下では、避難コストを意識することで避難率が低くなる傾向が得られた。また、低確度の条件下では、災害脅威といった個人的特性や不安を喚起する知覚刺激が避難率を高めることが明らかになった。
【発表2 :深層崩壊前微動土塊の干渉SAR広域探索調査・崩壊危険度評価手法の確立に向けた検討】
 新潟大学 災害・復興科学研究所 特任准教授 水野 正樹 様


(講演概要)
 深層崩壊について、事前に危険な斜面を抽出し、崩壊による災害規模と危険性を予測する手法の確立を目的として、DInSAR(差分干渉合成開口レーダ)画像解析、GNSS移動杭測量、UAV(無人航空機)調査、崩壊地危険度評価による一連の事例研究を行った。
 まずDInSAR画像を用いて地表が変位している領域を確認し、地すべりの可能性がある箇所を抽出した。抽出箇所のうち、下流に集落がある地すべりにおいてGNSS測量を実施し、変位があることを確認した。
 そして対象地すべりに対して崩壊地危険度評価解析を行った。その結果、崩壊発生前の段階で、すべり面となる可能性が高い層の形状および崩壊土砂の流下範囲と集落への土砂到達時間を推定することができた。
【発表3 :渓床堆積物再移動型土石流の発生につながる伏流水の変動特性と降雨指標による発生領域評価】
 三重大学大学院 生物資源学研究科 教授 山田 孝 様


(講演概要)
 渓床堆積物の移動による土石流の発生時刻やその規模の予測に寄与することを目的として、豪雨時の渓床堆積物内の伏流水の変動実態から土石流発生までのプロセスとメカニズムに関する研究として、 2008年から、藤原岳の西之貝戸川流域において、パイプ孔の実態と豪雨中におけるパイプ孔からの伏流水流出についての観測を実施している。 その結果、複数存在する各パイプ孔の出口付近の構造等には大きな違いは認められないが、伏流水の流出発生・終息時刻・継続時間・ピ-ク流量・総流量は異なっていることが分かった。また、パイプ流はただちに土石流の発生をもたらすものではないが、パイプ孔の閉塞現象によるその後の異なる箇所からの伏流水の流出現象があると、渓床堆積物が不安定化し土石流が発生すると考えられる。
【発表4 :TDR(時間領域反射測定法)による流砂量連続観測手法の開発と流砂観測網高度化への活用】
 京都大学 防災研究所 助教 宮田 秀介 様


(講演概要)
 流域土砂管理のために土砂移動量を把握する必要がある。本研究では、流砂量式から正確な流砂量を算出することが困難な山地流域での土砂移動量を把握することを目的に、山地河川や堆砂池等の堆砂面高さ及び空隙率を推定する手法の研究を行った。
 研究内容は、土壌水分観測に用いられるTDRを用いた流砂量連続計測システム構築のための水路実験と現地観測である。
 複数プローブを有する連続計測システムを構築し、システムの検証を行うために水路実験を行ったところ、良好な精度で堆砂量を計測できた。また、ヒル谷での給砂実験の結果、実測値より僅かに過大評価となるものの、土砂流入による堆砂面上昇とその後の侵食による堆砂面低下を的確に計測することができた。
【発表5 :湧水シグナルの高度利用化による 付加体堆積岩山地における深層崩壊予測精度の向上-電気伝導度(EC)の活用方法の検討-】
 京都大学大学院 農学研究科 教授 小杉 賢一朗 様


(講演概要)
 深層崩壊危険度や崩壊発生時期の予測における電気伝導度(EC)の活用方法について検討を行う目的に,山地渓流のECの空間分布の調査を行った。
 本研究では,付加体堆積岩と花崗岩が分布する信楽試験地において,渓流水・湧水ならびに基岩地下水について流量・水位,EC,溶存イオン濃度等の観測を実施し, 山地渓流のEC空間分布と地下水流動の関係を検討した。
 観測の結果,花崗岩山地では,基底流量が多く基岩地下水の集中が認められる流域においてECが高く,崩壊の危険性に寄与する基岩地下水の流入が想定された。一方,堆積岩山地では,基岩地下水の集中が認められる流域においてECが低く,渓流水のECだけを基準として基岩地下水の集中域を探索することは適当でないことが示された。
【発表6 :大規模地震発生後の警戒・避難基準雨量の設定とその解除時期に関する研究】
 信州大学 農学部 教授 平松 晋也 様


(講演概要)
 地震後の土質強度の変化を考慮した警戒・避難基準雨量の設定手法を確立することを目的に、地震時に作用した衝撃による土質強度の変化の定量的な把握方法に関する研究を行った。
 研究を実施するにあたり、花崗岩斜面から採取した実験用供試体を用いて、衝撃試験、一面せん断試験および斜面安定解析を実施した。
 その結果、花崗岩斜面において、1.5G以下の加速度が作用した場合、崩壊発生限界雨量は2~3割程度低下し、2.0G以上の加速度が作用した場合には、崩壊発生限界雨量は3~5割程度低下することが明らかとなった。一方、地震発生後の時間経過とともに、崩壊発生限界雨量は回復傾向を示し、2~3ヵ月程度経過すると完全に回復する結果となった。
当日の会場の様子
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