流木対策への取り組み
流木は水に浮いて流下して氾濫末端まで届くため土砂災害の被害を拡大させ、また、河道の狭窄部や橋梁等で閉塞し氾濫の要因となることもあります。STCでは、新たな流木捕捉工や流木被害を想定するための数値シミュレーションの開発を行っています。
鋼製透過型砂防堰堤の流木捕捉性能
不透過型砂防堰堤は、構造上水を堰上げるため、大量の流木を捕捉することが難しいと考えられています。これに対し、鋼製透過型砂防堰堤は、開口部を大きくとることで水と土砂を効率よく分離し、流木をしっかりと捕まえることができます。流木により開口部が閉塞すると、その後に流れてくる細かい土砂も捕捉されるため、土砂流出対策としても有効に機能します。掃流区間では、構造物の高さ以上に流木を積み上げるように捕捉されることもあります。このように鋼製透過型砂防堰堤は、流木対策として非常に有効な施設です。
流木対策に関する新たな取り組み
張出しタイプ流木捕捉工
張出しタイプ流木捕捉工は、既設不透過型砂防堰堤の水通し部上流側に流木捕捉用の鋼製部材を設置する工法です。平成29年7月に発生した九州北部豪雨における流木被害をきっかけに、流木対策を早急かつ迅速に進める必要性が高まり開発した技術です。張出しタイプは学識経験者等とともに研究会を設けて検討を重ね、手引き書を2020年(初版)、2024年(改定版)に発刊しています。
「張出しタイプ流木捕捉工設計の手引き」 (PDF)

スクリーン型流木捕捉工
スクリーン型流木捕捉工は、掃流区間の流路工に設置することを想定した流木捕捉工です。
縦断方向に長い断面構造は、流木捕捉時の外力に対して安定した構造です。
また、捕捉面が傾斜しているため、流水と流木を分離しやすく、水位の上昇を抑制しつつ効果的に流木を捕捉できます。
スクリーン型流木捕捉工

数値シミュレーションによる流木閉塞の被害想定
流木がもたらす被害について、これまで水理模型実験や粒子法による数値シミュレーションが行われていますが、橋梁付近のみを対象としたものが多く、上流から下流まで一連に再現して被害を推定するプログラムが少ない状況にあります。STCでは従来の一次元河床変動計算に追加する形で、流木が橋梁で閉塞し水位が上昇する過程を再現するためのプログラムを開発しました。
流木の閉塞による被害想定 一次元河床変動計算への組み込み
機関誌sabo Vol.133流木に対応した指針・マニュアル等の改定に関する取り組み
鋼製透過型砂防堰堤に関する研究も継続して行い、この成果を「新編・鋼製砂防構造物設計便覧<令和3年版>」として2021(令和3)年に発刊しています。流木捕捉工を計画、設計する場合にご活用ください。
「新編・鋼製砂防構造物設計便覧<令和3年版>」 (PDF)
海外の事例紹介
流木対策-実務入門- (Wildholz- Praxisleitfaden-)の和訳文献の作成
ヨーロッパアルプス周辺諸国における流木対策の実務に関する手引き書として、 インタープリベント事務局が作成した「Wildholz-Praxisleitfaden-」について、 STCが和訳・校正した文献「流木入門-実務入門-」を掲載しています。
流木対策-実務入門- (Wildholz- Praxisleitfaden-)の紹介 (PDF)
流木対策-実務入門- (PDF)
“Design Guidelines for Installing a Joined Rigid-Frame Driftwood Entrapper in the Existing Sabo Facilities(English translation)” is available for free.
“Design Guidelines for Installing a Joined Rigid-Frame Driftwood Entrapper in the Existing Sabo Facilities(2020 Version)” Background documents and introductory technical notes by the author Joji Shima himself, with most frequently asked questions (and technical advisories of the Center) are hereby made available FREE ONLINE.
Guidelines(English translation)
Guidelines(English translation)
- No.1
Introductory technical notes by Dr. Joji Shima, “sabo_topics” in the summer 2020 (PDF) - No.2
Translated version of engineering article for the coming upgrading: Dr. Joji Shima and Ken’ichi Yasutomi, JECE, 2022, Vol75, No4 (PDF) - No.3
FAQ for the current version of design guideline (PDF)