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機関誌『SABO』Vol.125 巻頭言 ~変わるメモリ~

※こちらは、機関誌『SABO』Vol.125の巻頭言の内容を載せております。

◆変わるメモリ

 2018年の夏は、全国5 ヶ所で40℃を超えました。
 うち熊谷市の41.1℃を含め4観測地点で41.0℃を超え、3観測地点が国内観測史上3位を独占しました。その原因が温室効果ガスの影響なのかどうかは別として、「気象庁全国気象ランキング」の上位20位は、山形(昭和8年・1933)と宇和島(昭和2年・1927)の2地点を除いて、すべて平成に入ってからの記録です。こうなっては、温度計が40℃を指す報道を見ても、たいして驚かなくなります。
 また1時間降水量50mm以上の年間発生回数は、最近の10年間(2008 〜2017年)では238回/年、統計開始直後の10年間(1976 〜1985年)では174回/年となっています。つまり40年間で約1.4倍に増加しており、「これまでに経験したことのない豪雨」が「経験した降雨」になり、いわゆる「雨慣れ」となりつつあります(気象庁HP「全国(アメダス)の1時間降水量50mm以上の年間発生回数データ」より)。

 さて、今年5月から新しい元号に変わります。平成の30年間は、暑く多雨になったという自然現象だけではなく、社会的な分野でも判断のメモリ(以下、昭和風に「尺度」ということにします)が大きく変わってきたものと思います。例えば経済面では、戦後の高度成長からバブルの崩壊とその後遺症である「失われた20年」と続きました。その象徴的なこととして、平成元年(1989年)の株式市場の最終株価は39,870円(「日経平均」以下同じ)でしたが、平成30年の終値は約半分の20,014円(最安値は7,621円)と乱高下し、「土地と企業価値は上がる」というそれまでの「常識」が崩れました。また、急速な少子高齢化がもたらす社会構造的な財政圧迫の主対策として、平成元年から消費税が導入され、その税率の引き上げの度に使途についての議論が活発になりました。財政はもはや一部の専門家に任されたものではなく、国民的な課題になっています。また、社会規範、特に組織運営面から、パワハラ対策、セクハラ対策への厳格な運用が求められています。そして、市町村の立場で自然災害への危機管理をみると「これまでより頑張ったのに」「今までと変えていないのに」「これくらいのことで」「実状を見ないで建前だけで批判を受けてしまうのか」という感想が聞かれるようになってきました。
 たとえ無意識であっても、我々が行動する際には判断の尺度を念頭に置くものですが、昨今情報の拡散の早さから、その尺度が時の経過とともに大きく変わりつつあることに気がつきます。時として、その激しい変化に「追いつけない」「変化したことさえ気がつかない」がための問題を耳にするたび、自身も不安に思うことがないでしょうか。こんな時こそ、変化を見極めた尺度を意識して、社会に対応し貢献していきたいものです。

 砂防・斜面保全分野でも、平成2年の阿蘇一の宮の「流木」、3年の雲仙普賢岳の「火砕流」からはじまって、「深層崩壊」「天然ダム」が次々に「砂防用語」として認知されてきました。すなわち「砂防」の範囲が広がって来たことになります。STCは砂防・地すべり技術の提供を専門とする建設省認可のコンサルタントとして昭和に生まれ、平成に入り行政の人員不足への技術支援組織として、建設省(現・国土交通省)、さらに内閣府所管の財団法人としてしっかり育ちました。その平成も残すところ2ヶ月余りとなり、新たな元号へと遷ります。新元号のもとではさらに変化に速やかに対応し、技術支援のみならず、新技術・新工法の開発・普及の分野においてもより積極的に活動し、加えて、技術施策を提言出来る「砂防・地すべり技術のシンクタンク」を目標として、階段を一歩一歩上っていきたいと考えています。
 目標への物差しは変わりませんが、そのメモリは社会情勢や個人の価値観により、甚だしい時には、単位まで変わります。それらを敏感に察知して、砂防・地すべり技術センターは、その使命である「土砂災害防止の技術的支援」を行っていきます。そして、平成最後の年末の漢字となった「災」を転じて、新元号最初の年末の一文字を「福」と為すよう、微力ながら努めて参る所存です。是非皆様に当センターをご活用頂きますようお願い申し上げます。

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