『平成27年度 砂防地すべり技術研究成果報告会』を開催しました。

 11 月 10 日(火)、砂防会館別館シェーンバッハ砂防(東京都千代田区)において、『砂防地すべり技術研究成果報告会』を開催致しました。
 国土交通省・都道府県、公益法人・民間企業等より多数の方々にご参加いただき、センター職員と合わせて 194 名の参加者となりました。ここに改めてお礼申し上げます。
 なお、本報告会の発表論文集は当センターにて頒布しております。詳細はこちらです。

【発表 1 :湧水を活用した深層崩壊警戒対応の確立】
鹿児島大学 農学部 教授 地頭薗 隆 様

(講演概要)
  深層崩壊による土砂災害を防止・軽減するために崩壊発生予測手法および警戒避難体制の整備が社会的に急がれている。
  湧水は深層崩壊発生時期を予測する重要な因子であるといえることから、本研究において湧水の情報を指標にした深層崩壊発生の危険度を評価する湧水センサーを開発した。また、渓流水EC分布から深層崩壊発生場を予測する研究も進めている。
  深層崩壊警戒対応の考え方として、湧水流量の状況として(1)増加中、(2)流量が多いまま頭打ちの状態、(3)急激に減少、の3つを想定している。降雨終了後も上記の状況が見られる場合は警戒対応を継続しなければならず、警戒対応解除は、湧水流量が初期の流量にゆっくり戻ったときと考えている。  

【発表 2 :ハイドロフォンによる掃流砂計測の高精度化に向けての検討】
京都大学 防災研究所 准教授 堤 大三 様

(講演概要)
 ハイドロフォンによる掃流砂観測の課題の一つとして、砂礫が金属パイプに衝突せずに通過してしまう事により掃流砂量を過少評価してしまう。
 そこで、本研究ではハイドロフォンを縦向きに設置して鉛直方向の流砂量を観測し、水平・鉛直ハイドロフォンの検出比を用いることで水平ハイドロフォンの流砂量を補正する手法を検討した。補正した流砂量とピット掃流砂量計による直接的な観測値とのキャリブレーションを行ったところ、補正しない場合よりも良好な対応関係が得られ、有効性が示された。
 矩形河道等では、縦型ハイドロフォンを設置することで非衝突粒子の問題などが解消され、精度の高い流砂観測が可能になると考えている。

【発表 3 :森林斜面内での土砂移動プロセスに着目した福島原発事故で沈着した137Csの流出機構の考察】
東京大学大学院 農学生命科学研究科 特任助教 小田 智基 様

(講演概要)
 2011年3月11日東日本大震災による地震動と津波の影響等により、福島第一原子力発電所から多くの放射性核種が放出され、東日本の広範囲に降下した。そこで本研究では、半減期が30.1年と長く、長期間にわたり環境に残存し、影響を与え続けることが懸念されている137Csに着目し、@森林斜面における地表の線量分布観測による137Cs移動量の評価、A137Csの流出量の推定、について調査・考察した。 調査・考察の結果、林内雨・リターフォールによる影響に加え、斜面上部からの土砂移動やリタ―の供給により137Csが斜面上をゆるやかに移動することが確認された。今後、斜面下方への137Csの移動が進行した場合、渓岸部の137Cs濃度が上昇することで、洪水発生時に多量の137Csが下流に流出する可能性がある。

【発表 4 :流域特性に応じた透過型砂防堰堤の捕捉機能に関する検討】
京都大学大学院 農学研究科 助教 中谷 加奈 様

(講演概要)
  閉塞タイプの透過型砂防堰堤について、流域特性(勾配、土砂濃度、礫径、流木など)に応じて捕捉機能を十分に発揮する堰堤形状(格子堰堤、縦堰堤、横堰堤)を水理実験及び数値シミュレーションを行い検討した。
  実験結果によると、土砂捕捉率は勾配に関係なく格子堰堤→縦堰堤→横堰堤の順に高い。また、流木は流れの先端に集中するため、流木ありケースでは横堰堤において捕捉率が格段に上昇した(0%→80%)。
  また、数値シミュレーション(里深・水山(2005)の透過型堰堤閉塞モデル、流木なしケースのみ)による実験結果の検証では、土砂捕捉率は実験結果と比べて低い結果となり、特に土砂濃度0.04以下ではその差が顕著であった。
  実験結果と同程度の捕捉率をモデルで表現するには、土砂濃度を変えた条件で、特に濃度0.05付近について更なる検証を進めてモデル改良を行うことが必要であると考えられる。

【発表 5 :防災・減災の啓発を意図した災害展示のあり方 ―シナリオを減らす展示から増やす展示への転換―】
名古屋大学大学院 生命農学研究科 准教授 田中 隆文 様

(講演概要)
 近年、防災・減災の取組として将来の災害に備えた啓発活動が盛んに行われている。認識の乖離が問題となることから、共通の認識を築いていく方策のひとつとして、博物館への期待がある。
 しかし、博物館等において災害に関する科学的知見を展示する際、個別の様々な履歴を背負った災害事例のありのままの姿を展示すべきなのか、あるいは科学の法則を説明するために典型的な事項をわかりやすく展示すべきなのか、災害のどのようなシナリオを例示すればよいか問題となる。
 そこで本研究では、全国の様々な災害展示を調査し、グッドプラクティスを指摘するとともに、防災・減災の啓発を意図した災害展示のあり方について検討した。

【発表 6 :土石流災害が被災地に与える影響について】
(一財)砂防・地すべり技術センター 砂防部 安田 勇次

(講演概要)
  本研究では、2002年7月に熊本県水俣市集地区において発生した大規模土砂災害を対象とし、土石流災害による精神的被害額の算出を試みた。
  最初に、集地区における住宅地図(2003〜2011)の収集及び現地調査(2013)を行い、災害から生活再建を遂げるまでの期間、及び住居率を調査した。この調査から集地区では災害から住民が住宅を再建するまで概ね10年の期間を要したことが分かった。避難生活を強いられた10年を対象に精神的被害額を算定した。
  今回の試みによって、対象流域の費用対効果は1.47が1.57となり、予防的対策の有効性を示す一つの指標になった。
  今後は土砂災害のみならず、土砂氾濫被害にも適用可能な更なる事例の収集に努め、避難所生活等を強いられる方々の精神的被害額を試み、砂防事業評価手法への適用に向けて提案していきたい。

当日の会場の様子

 


砂防地すべり技術研究成果報告会ページトップ
平成 27 年度 砂防地すべり技術研究成果報告会の概要
平成 26 年度 砂防地すべり技術研究成果報告会の概要
平成 25 年度 砂防地すべり技術研究成果報告会の概要
平成 24 年度 砂防地すべり技術研究成果報告会の概要
平成 23 年度 砂防地すべり技術研究成果報告会の概要
平成 22 年度 砂防地すべり技術研究成果報告会の概要
平成 21 年度 砂防地すべり技術研究成果報告会の概要
平成 20 年度 砂防地すべり技術研究成果報告会の概要
平成 19 年度 砂防地すべり技術研究成果報告会の概要