■鋼製砂防構造物委員会,鋼製砂防構造物設計便覧

 当センターでは鋼製砂防構造物について,昭和60年度から鋼製砂防構造物技術検討サービスを実施しております。 このサービスは実施段階の案件について,国や都道府県等のユーザーからの依頼を受け,具体的案件の鋼製砂防構造物が適切に計画・設計されるよう留意すべき事項を報告書として依頼者へ回答するものです。 また,個別具体的案件で特別の検討が必要なものは受託による技術指導を行っております。
 この鋼製砂防構造物Q&Aコーナーは,鋼製砂防構造物の導入段階における,計画,設計等に関する技術的疑問に対する解決の一助として,ユーザーからの質問に当センターのホームページ上に回答を載せる形式で開設しました。 なお、鋼製便覧に関するお問い合わせについても、Q&Aコーナーをご利用下さい。
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「平成21年度構成砂防構造物設計便覧」の正誤表


 更新履歴
・平成18年9月  公開
<質問(1)>
 鋼製砂防構造物は、錆びると強度が低下して使えなくなるのでは?
[国土交通省事務所職員]
<回答(1)>
 鋼製砂防構造物は、計画段階で現地のphを計測し、ph4以下の酸性河川の場合には設置を避けるか、何らかの防錆処理を施します。また、各部材は錆による板厚の減少を考慮して設計しています。鋼製砂防構造物設計便覧平成13年度版(P28)では、錆しろ1.5mmを見込んでいます。つまり、錆に対しては、あらかじめ錆の進行しにくいところを選び、かつ発錆による板厚減も見込んで計画・設計しています。万が一、錆により板厚が減少している場合には、減少した板厚で再計算し、部材の発生応力が降伏を超えるようであれば補修あるいは補強対策を施す必要があります。

 実際には、錆が発生している鋼製砂防構造物も、鋼材内部にまで錆が進行していることは希で、見た目ほど錆による板厚減はありません1)。錆の進行を測定するには、実際に板厚を測定することになりますが手間が掛かります。簡単な判定として、例えば他の部位に塗装が残っていれば内部まで進行していないと考えてよいでしょう。ただし、鋼製枠のように土中に埋め込まれている場合には目視によって確認できません。そこで、計画前に流水のphや土の比抵抗値を測定することで鋼構造物の適地か確認する必要があります。土壌内には錆進行を促進させるバクテリアもありますが、通常は無視してよいでしょう。

 錆は鋼構造物の耐用年数に最も影響を与えます。砂防設備を建設する場所は、沿岸部や工業地域のような亜硫酸ガスや塩分など、錆を促進させるような場所から遠いため、錆が進行しにくい場所と言えるでしょう。ただし、火山地域では亜硫酸ガスの影響の及ぶ場所もありますから、塗装による防錆処理が必要です。

1)嶋丈示:鋼製透過型砂防堰堤の腐食に関する一考察、平成15年度砂防学会研究発表会概要集,pp.152-153


錆の事例 小有珠川1号の沢1号スリットダム(昭和54年竣工)
錆の事例 小有珠川1号の沢1号スリットダム(昭和54年竣工)
→鋼材の表面に錆が発生したため塗装の一部が剥がれているが、鋼材内部に錆が進行しているわけではなく板厚は減少していない。
[回答者:鋼製砂防構造物委員会]
<質問(2)>
 鋼製透過型砂防えん堤に巨礫が衝突して部材が凹んだ場合、その部材は取り合える必要はありますか?また、どうやって取り替えるのでしょうか?
[国土交通省事務所職員]
<回答(2)>
 鋼製透過型砂防えん堤は、鋼管の凹み変形により礫の衝撃エネルギーを吸収します。つまり、凹むことを前提にしています。しかし、凹みが累積されると所定の強度が得られなくなるため、補修・補強、場合によっては取り替えることになります。この目安として、凹み量が鋼管外径の10%までは健全と見なし、40%を越えると鋼管としての耐力を喪失したものとして取り替えの対象となります1)。その中間(10〜40%)の場合は、凹みを生じた部材の耐力低下を考慮して、設計外力に抵抗でるか試算し、その結果によって補修の有無を判断することになります。

 取り替える場合、次のような方法が考えられます。既存の鋼管製鋼製砂防えん堤は、鋼管同士を溶接あるいはフランジ継ぎ手で連結しています。フランジ継ぎ手はボルトで接合しているため、ボルトを外せば部材を取り替えることが可能です。ただし、交換しなければならないほど鋼管が凹むとともに、フランジ近傍も変形しているような場合があります。このような場合には、設計時の寸法では取り替え出来ない可能性があるため、現地で寸法を計測しこれに合わせて部材を作る必要があります。

 鋼管同士が溶接で連結されている場合や、鋼管が底版コンクリートに埋め込まれている場合には取り替えはできません。このような場合には、鋼管の外側から補修・補強することになります。補修・補強方法に決まったものはありませんが、事例として傷んだ鋼管の外から同程度の板厚の鋼鈑を巻いたものがあります。このとき元々あった鋼管は傷んでいることから残存耐力は無視し、外側から巻いた鋼鈑のみで外力に抵抗できるように補修しています。

1)白石博文、梶田幸秀、香月智、石川信隆、松村和樹、嶋丈示:礫衝突による損傷を受けた中空鋼管の残存耐力評価実験、構造工学論文集,Vol.48A.pp.1505-1512,2002.3.


鋼管補修事例 阿木川(岐阜県)
鋼管補修事例 阿木川(岐阜県)
→柱根元が複数個の礫の衝突で凹んだため、鋼板を外側から溶接し補修した。
[回答者:鋼製砂防構造物委員会]
<質問(3)>
 鋼製砂防構造物の塗装は何年ごとに塗り替えるのでしょうか?
[国土交通省事務所職員]
<回答(3)>
 鋼製砂防構造物の錆対策は、基本的には錆しろを設けることで対応しています(Q1参照)。したがって、火山地域や酸性河川のような錆進行が懸念される場所以外では、塗装が無くなっても強度上は何ら問題なく、塗り替えの必要もありません。しかし、塗装を施すとその期間は錆が発生しないため、完成当初の強度を長期間維持できます。ライフサイクルコストの面から見て塗装した方が得策といるでしょう。
 また、近年では民家に近い場所にも設置されることが増えてきています。錆の発生自体は強度上問題ない場合にも、錆が生じることで鋼材の強度低下があるのではといった見た目の不安感があります。そのイメージを払拭する意味や景観対策として塗装は有効と考えられます。このように、周辺環境に配慮する必要がある場合は塗り替えを検討してもよいでしょう。
[回答者:鋼製砂防構造物委員会]
<質問(4)>
 鋼製枠えん堤は土石流区間に使っても大丈夫でしょうか?
[国土交通省事務所職員]
<回答(4)>
鋼製枠えん堤
鋼製枠えん堤

 土石流が直撃する場所は避けるべきです。鋼製枠えん堤は形鋼をボルトで連結して枠を形成し、この中に礫を詰めることから、鋼製枠と中詰め材の共同作用で外力に抵抗します。この鋼製枠と中詰め材による抵抗性によって、土石流流体力や堆砂圧といった外力に対して安定性を保つことができます。しかし、巨礫の衝突といった局所的な外力の作用によって鋼製枠の一部が破損すると中詰め材が流出して構造として成り立たなくなります。このため、局部的な損傷に対する抵抗性を確保しなければなりませんが、枠に使用している鋼材のみで対応することは現時点では難しいようです1)。

 ただし、土石流区間であっても上流側を埋め戻すなど、待ち受けとして使用しない場合には使用可能な場合もあります。この場合も袖部が露出していると土石流の衝突により損傷する可能性があるため、これを防止するため何らかの保護が必要となります。

 鋼製枠えん堤は透水性がよく、地すべり地帯で水位を下げたい場合や、礫間からの植生が期待できることから景観対策として優れています。また、冬期施工も容易であり工期短縮が図れることから、緊急に施設を完成させる必要がある場合などにも有効です。このため、上記のような問題点をクリアできるよう設置箇所を選定したり、構造上の弱点を克服するような改良が望まれます。

1)大隅久、美野輪俊彦、園田佳巨:礫衝突を受ける鋼製枠構造の動的応答解析、平成18年度砂防学会研究発表会概要集,pp.220-221
[回答者:鋼製砂防構造物委員会]
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